米大統領予備選の延期相次ぐ、新型コロナ感染拡大受け

(米国)

米州課

2020年04月02日

新型コロナウイルスの米国での感染拡大を受け、大統領選挙に向けた予備選挙をこれから実施する各州が日程の大幅な変更を余儀なくされている。感染者数が約6万人と全米の4割を占め、感染拡大が特に深刻なニューヨーク州では3月28日、アンドリュー・クオモ知事が、4月28日に予定されていた予備選を6月23日に延期する知事令を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同知事は「投票のために多く人を1つの場所に向かわせるのは賢明ではない」と延期の理由を説明した(注)。ニューヨーク州では3月22日から、必要不可欠な事業を除き州内の全ての事務所や店舗を閉鎖し、あらゆる規模の集会を禁止する知事令が発動されている(2020年3月25日記事参照)。

ニューヨーク州と同じく4月28日に予備選を実施予定だったペンシルベニア州でも3月27日、トム・ウルフ知事が予備選実施日を6月2日に延期する法案に署名した。これら予備選日程変更は、民主党の大統領候補者指名争いの行方に大きな影響を与えそうだ。両州の民主党予備選代議員数はそれぞれ274人、186人と、今後予備選を控える州の中で最大規模で、これらの州での勝敗のインパクトは大きいためだ。

民主党予備選の次の注目日は6月2日に

そのほかの州でも予備選の延期が相次いでいる。「ニューヨーク・タイムズ」紙(3月30日)によると、上記2州のほか12州がこれまでに当初の日程を変更するか、予備選を郵便投票のみで行うことを決定した。その結果、6月2日に10州とワシントンDCの予備選が集中することになり、この日の民主党代議員数は合計で686人に上る。同日の結果によっては、大票田のニューヨーク州の予備選を待たずして、現在民主党の大統領候補指名争いで優位に立つジョー・バイデン氏が指名獲得を確実にする可能性も出てきた。

サンダース氏は選挙戦継続

AP通信によると、これまでの予備選での獲得代議員数はバイデン氏が1,217人と、サンダース氏(914人)をリードする。また、リアル・クリア・ポリティクスの直近の世論調査の平均支持率でも、バイデン氏は56.0%とサンダース氏(35.5%)に20ポイント以上の差をつけている。

こうした中、劣勢に立たされるサンダース氏は3月30日に、NBCのテレビ番組のインタビューで、新型コロナウイルスの感染拡大による被害は、自身が提唱する国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」の必要性を証明していると述べ、同制度への国民の認識を高めるために選挙戦を続ける考えを示した。民主党関係者の間では、予備選の延期とサンダース氏の選挙戦継続が、大統領選挙本選に向けて同党が早期に団結する機会を奪う一方、新型コロナウイルス対策でメディアの注目を集めるトランプ大統領を利すると懸念する向きもある。

(注)ピュー・リサーチ・センターが全米の成人を対象に実施し、3月30日に発表したアンケート結果(2020年4月2日記事参照)では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中やりたくない行動として、回答者の66%が「投票所に行くこと」を挙げている。

(甲斐野裕之)

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