ベトナム、コメの輸出禁止措置を解除

(ベトナム)

ホーチミン発

2020年04月21日

ベトナム政府は4月10日、コメの輸出禁止措置を解除し、4月に40万トンを輸出することを決めた。3月24日時点で、グエン・スアン・フック首相は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中、国内の食料安全保障を確実にするため、5月下旬までのコメの輸出を禁止していた。4月11日付「VNエクスプレス」が報じた。

フック首相は、農家と取引業者の利益を守るコメの輸出計画の作成を関係省庁に指示した。財務省はコメの輸出量の管理を行うとともに、国内備蓄用に19万トンを購入する。商工省は、設定した輸出割当量に達した時点で、税関に輸出を停止するよう通知することとされている。

税関総局のデータによれば、ベトナムでは、2020年1~2月のコメの輸出が増加している。マレーシア向け(前年同期比149%増)や中国向け(同595%増)など、輸出量は92.9万トン(同31.7%増)となっており、輸出急増にともなって国内価格も上昇している。さらに3月に入り、コメの主要な産地であるメコンデルタ地域の干ばつと塩水遡上が深刻化しており、輸出が今のペースで増加すれば国内供給量が不足するとの懸念があった(3月25日付「税関オンラインニュース」)。しかし、商工省は、農家や取引者からコメの輸出に対する要望をもとに調査を行った結果、今年は国内供給が国内需要を670万トン上回るとして、首相に輸出禁止措置の撤廃を求めていた。

4月11日午前0時より、税関システムで、4月分の輸出割当の申請が開始されたが、約3時間で割当量に達したため、申請が締め切られた。国際価格の上昇をチャンスととらえた多くの事業者がシステムにアクセスできなかったため、輸出用に準備したコメを保管して5月分の割当てを待っているという(4月14日付「VNエクスプレス」)。5月の割当量は今のところ未定だが、引き続き一定の制限がなされる見込みだ。

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、ベトナムは、インド、タイに次ぐ世界3位のコメ輸出国だ。また、4月14日付「VNエクスプレス」によると、2019年は、637万トン(28億1,000万ドル相当)が、フィリピン、マレーシア、中国などへ輸出された。

(比良井慎司)

(ベトナム)

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