新型コロナウイルスで病欠手当支給前倒し、プレミアリーグは4月2日まで全試合見合わせ

(英国)

ロンドン発

2020年03月16日

ボリス・ジョンソン首相は3月12日、英国内で新型コロナウイルス感染が急増していることを受け、9日に続く週内2回目の政府危機管理委員会(COBRA会議)を開催した。首相は開催後の演説で、同感染症の急拡大について「一世代に一度の衛生上の危機だと認識してほしい」とコメント。同感染症による英国のリスクレベルを「中程度」から「高度」に引き上げ、3月3日に公表した行動計画における対策の段階(2020年3月4日記事参照)を、「封じ込め」から「遅延」に移行させた。

これに伴い政府は、37.8度以上の熱や継続的なせきの症状がある場合は、感染拡大地域への渡航の有無にかかわらず、軽症でも7日間の自己隔離を要請。症状のある国民に自己隔離を促すため、病気欠勤手当の支給を従来の4日目から1日目に前倒しする規則改正を行い、3月13日に発効させた。従業員250人未満の事業者には、病欠手当2週間分までの支給額を補填する。渡航履歴によらない対策を打ち出したことで、これまでの渡航履歴区分に基づく勧告は取り下げた。

国内教育機関に対しては、18歳未満の生徒・児童の海外渡航中止を勧告。一方、休校措置についてジョンソン首相は、「学校はまだ閉鎖しない。科学的な助言によれば、現段階では効果よりも社会的損害が大きい」と明言。ただし、今後は感染拡大を踏まえた科学的な助言があれば、その可能性もあるとの考えも明らかにした。

対策を強化する一方で、世界各地で広がっている感染拡大国からの渡航者の入国規制は打ち出していない。リシ・スーナック財務相は3月12日、BBCのラジオ番組で、「国境閉鎖や渡航禁止のような措置が感染拡大に実質的な効果があるという科学的な根拠はない」と述べ、現時点では同様の対策をとる考えがないことを強調している。

こうした政府の対策は手ぬるいとの批判も出ている。ジェレミー・ハント下院保健委員長はメディアに対し、大規模イベントや介護施設への面会訪問などが禁止されていないことに懸念を表明。スコットランド自治政府は3月12日、500人以上の大規模集会を3月16日から中止・延期するよう、独自の勧告を発した。既に主催者判断によるイベントの中止は相次いでおり、サッカーのイングランド・プレミアリーグも13日、4月最初の週末まで全試合を中止することを決定。英国政府もさらに踏み込んだ対策を打ち出す可能性が増している。

(アダオラ・キング)

(英国)

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