WIPO次期事務局長にシンガポール特許庁長官ダレン・タン氏を指名

(スイス、世界)

ジュネーブ発

2020年03月16日

世界知的所有権機関(WIPO)は加盟国のうち83カ国からなる調整委員会を3月4日に開催し、9月末日に任期を満了するフランシス・ガリ事務局長の後任として、シンガポール特許庁長官のダレン・タン氏を指名することを決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。5月7、8日に開催されるWIPO特別総会で正式に任命される。

今回の事務局長選挙では、国際機関への進出が著しい中国に対し、米国が対抗するという流れが明らかとなった。2019年12月30日の期限までに10カ国から候補者が擁立された。日本政府は10月29日、WIPO特許協力条約(PCT)法務・国際局上級部長の夏目健一郎氏を事務局長選挙に擁立したが、先進国出身の現事務局長が2期12年を務めた後は、新興国出身者が次の事務局長に就くことが知財制度を新興国を含めた全ての国の人々のためのものとするのに望ましいとの意見を受け、2月14日付で夏目氏の推薦を取り下げた。2月中旬までに日本を含む4カ国が立候補を取り下げたため、当日は残る6カ国(カザフスタン、シンガポール、中国、コロンビア、ガーナ、ペルー)の候補者について投票が行われた。

2月26日付「ル・トン」紙は、米国税関が差し止める模倣品の85%は中国が責任を負うとする「フィナンシャル・タイムズ」紙の論説を引用し、中国に批判的なトランプ政権としては中国からの候補者である王彬穎(ワン・ビンイン)WIPO事務次長の就任を阻止するため、シンガポールのダレン・タン氏を支援しているとの、在ジュネーブ国際機関中国代表部のチェン・シュー大使の談話を報じた。また、近年、中国は国際機関でのプレゼンスを強めており、国際電気通信連合(ITU)、国連食糧農業機関(FAO)など4つの国連機関に事務局長を送り込んでいるが、同紙は、2019年6月のFAO事務局長選挙では欧米諸国の連携が失敗したと指摘している。

今回は欧米の多数派工作が奏功し、3月4日の決選投票ではダレン・タン氏が55票、ワン・ビンイン氏が28票となり、タン氏の指名が確定した。

(和田恭)

(スイス、世界)

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