日EU・EPAの活用、関税を負担するDDP条件の輸出でメリット

(EU、フランス、日本)

欧州ロシアCIS課

2020年03月27日

2019年2月1日に発効した日EU経済連携協定(EPA)。多くの日本企業が特恵関税を活用している。欧州での関税を輸出者である日本企業が支払う貿易条件の事例として、東日本にある工業用部品メーカー(以下「A社」)に2月20日、ヒアリングを行った。

A社は英国メーカーB社を輸出先、フランスの機械加工メーカーC社を納入先とするDDP(仕向け地持ち込み渡し・関税込み)条件の貿易をB社と行っている。同条件では、輸出者であるサプライヤー(A社)が輸入国(フランス)税関に関税と付加価値税(VAT)を納付し、それらを貿易相手(B社)に商品価格に上乗せし請求する。ただし、日本企業自ら輸入申告者とはなれないことから、輸送業者に輸入申告者となってもらう「間接代理人制度」を活用することが多い。A社も同様で、輸送業者が立て替えた税を精算し、VATは後日還付請求する。

A社が負担すべきフランスの関税2.7%は、輸出者であるA社が日EU・EPAが定める「原産性に関する申告文」をインボイスに書き込むことで免除されている。B社から指定され選択の余地がなかったDDP条件での取り引きだったが、A社は同EPAを活用した結果、販売価格が関税分下がり競争力が向上したことで、サプライヤーの選択をシビアに行う大手B社からの受注継続を見込む。価格競争では僅かな金額差が決め手となるという。

同EPAが発効した2019年2月1日時点で商品は地中海上を輸送中だったが、A社は2月1日以降の日付で原産性の申告文を記載すれば適用できることをジェトロに確認し、同申告文を記載したインボイスを追って送付することでB社からの要請を待たずに発効当初から特恵関税を享受している。

A社はこれまでもアジア向け輸出において日本商工会議所から原産地証明書の発給を受けて「第三者証明制度」を取るEPAを活用してきたが、「自己証明制度」を採用する日EU・EPAの活用にあたっては手探りで情報を収集した。申告文には作成日から12カ月の最大期間を明記し複数回の輸送に対応中、トラブルもないという。

A社は、英国のEU離脱に伴う移行期間が2020年末に終了後の、B社との貿易条件の変更可能性をめぐり、日英間のEPA交渉やEU・英国間のFTA交渉の行方次第ではあるが、想定されるシナリオに注視したいという。

またA社は現在、英国に本社を有する日本法人E社から受注しており、E社は買い取った部品を欧州を含む世界へ輸出しているが、移行期間終了を契機にA社自らE社の納入先に輸出するよう求められ得るという。

現在のA社の主な海外顧客は、近場から輸送費を抑えて調達することが多い工業用部品の性質上、近隣アジア諸国のメーカーだ。 欧州への輸出額は売上全体の0.1%にも満たず、B社が唯一の欧州顧客である。しかし、A社の技術を評価し寄せられた引き合いには今後も1社ずつ応えたいとして、海外販路開拓にも意欲的だ。

(上田暁子、宮口祐貴)

(EU、フランス、日本)

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