新型コロナウイルス感染拡大に伴い、労働者の雇用を維持するための暫定措置令を即日施行

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年03月30日

ブラジル政府は3月22日、大統領暫定措置令(注)MP927号を公布し即日施行した。国内での新型コロナウイルス感染拡大に伴い、従業員の雇用を維持するべく現行労働法を緩和させるもの。概要は以下のとおり。

I - テレワーク

通常テレワークの実施には契約書の締結が必須だが、施行後は、雇用主側から文書やメールを通じて、最低でも48時間前に従業員に通知することでテレワークが開始可能。ただし、雇用主側は、通信機器インフラを整備するなど快適な執務環境を整える義務がある。

II - 年次休暇の前倒し取得

通常は、雇用主側から従業員に対して30日前に休暇日を通知する必要があるが、施行後は、最低48時間前に文書やメールを通じて通知することで休暇取得が可能。取得日数も5日未満の連続休暇が可能。また、12カ月の勤務後に取得しうる、いわゆる1カ月の有給休暇日数分についても先行して取得することが可能。

III - 集団休暇の付与

通常は15日前に労働組合および労働局への通知が不可欠であるが、雇用主側 から従業員に48時間前に通知することで休暇を付与することが可能。

IV - 祝日の前倒し

雇用主側が従業員に、48時間前に通知すれば実施可能。

V - 残業時間の休日への振替期限の延長

Banco de Horas制度(勤務時間ストック制度)と呼ばれる残業時間の休日への振替制度につき、多くの場合は1年以内に休日に振り替えることが義務付けられているが、この度の緊急事態期間が解除された後も、18カ月間の振替猶予期間が確保される。

VI - 労働の安全・衛生における管理義務の一時停止

VIII - FGTS(勤続年数保証基金)の積立義務の延期

職場で義務化されている健康診断の実施などについて一時中止する。また、職場の安全・衛生基準を満たすために必要な研修の実施についても一時中断する。なお、従業員は解雇時に必要な産業医の診断書については引き続き取得する義務がある。

なお、同暫定措置令は施行日と同日の22日に追加で第VII章が設けられ、「雇用停止期間を最長4カ月」とする条項が取り消された。

ブラジル保健省の発表によると、新型コロナウイルス感染者は3月25日時点で2,433人、死者は57人となった。先週19日時点では428人の感染者だったが、急速に感染者数が増えている。保健省は25日、新型コロナウイルス対策のために6億レアル(約132億円、1レアル=約22円)の追加投資を発表した。これらは各自治体などに分配され、ベッドの購入および設置などに充てられる。

(注)大統領暫定措置令は国会の事後承認が必須。120日間の審議期間が設けられている。

(松平史寿子)

(ブラジル)

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