ムヒディン首相が閣僚名簿を発表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年03月13日

マレーシアのムヒディン・ヤシン新首相は3月9日、新内閣の閣僚名簿を発表した。閣僚級の大臣は32人(首相を含む)で、ムヒディン政権では、従来の副首相を置かず、国際貿易産業大臣、防衛大臣、公共事業大臣、教育大臣の4人を上級大臣(Senior Minister)に任命した。同政権では、経済、国防、インフラ開発、教育、社会福祉に特に注力するとし、上級大臣たちはこれらの分野に関する内閣の議論において、首相を補佐する役割を担うという。また、マハティール前政権から一部省庁に変更がみられる。

ブミプトラが多数を占める内閣

閣僚は大臣が31人、副大臣が38人となる。ムヒディン首相が3月2日に「政治手腕があり、信用ができるクリーンな人物を選ぶ」と述べたように、起訴や係争中の議員は選出されなかった。

大臣ポストをみると、新与党連合(Perikatan Nasional:PN)における主要政党のマレーシア統一プリブミ党(PPBM)から10人、統一マレー人国民組織(UMNO)から9人で、全体の約6割を占める。もう1つの主要政党で、今回初めて与党となる全マレーシア・イスラーム党(PAS)からは3人が選出された。また、友党として、与党連合への支持を表明したサラワク州与党のサラワク政党連合(GPS)からも4人が名を連ねた。

閣僚ポストが増加、民間人の起用も

PNの構成政党は、マレー系およびムスリムが中心となる政党が多い。また、GPSに代表される東マレーシア出身議員は多くが先住民の出身だ。そのため、首相を含めた70人のうち約9割をブミプトラが占めることになった点が、マハティール前政権と比べて大きな違いといえるだろう。

民間出身者を起用した点も新たな要素だ。1人は財務大臣に任命されたザフルル・アブドゥル・アジズ氏で、マレーシアの地場銀行大手であるCIMB銀行の最高執行責任者(CEO)だ。もう1人は、イスラム教宗教指導者であるズルキフリ・モハマド・アル・バクリ氏で、首相府大臣(宗教担当)に任命された。両氏は上院議員に任命の予定だ。

また、大臣の数はマハティール前政権の29(首相、副首相を含む:注)から32(首相を含む)に増え、7つの省で副大臣を2人指名していることなどから、副大臣ポストは27から38へ増加した。

新内閣への評価では賛否両論

報道では、民間出身者を含めたテクノクラートを多く起用した点を評価する一方で、閣僚の増加、省庁の再編および増加、所管内容が不明な省庁に関して疑問を投げかける声が多いようだ。また、若手議員が起用されてきた青年・スポーツ大臣を含めて、40歳以下の閣僚がいない点、女性大臣の比率が全大臣の15.6%と、公的部門の役員の女性比率目標とする30%を切っている点が指摘されている。

(注)マハティール前政権では、副首相と女性・家族・社会開発相をワン・アジザ・ワン・イスマイル氏が兼務。

(田中麻理)

(マレーシア)

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