ルーブル為替レートが2016年以来の大幅安、新型コロナウイルス感染拡大に伴う原油価格下落受け

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年03月11日

ロシアの通貨ルーブルの為替レートが、原油価格下落を受けて大幅に下落している。ロシア国営通信社ノーボスチ通信(3月9日)によると、国際市場でのルーブルの為替レートは同日時点で1ドル=72ルーブル、1ユーロ=82ルーブルとなり、2016年2~3月以来の安値となった。

今回の下落は、3月6日にウィーンで開催された「OPECプラス」(注1)閣僚会合での、新型コロナウイルスによる世界経済の減速とそれに伴う原油需要減への対処に向けた原油生産の追加削減交渉が、ロシアが追加減産の決定先送りを主張したことで不調に終わり、その後、原油価格が大幅に下落したことに端を発しているとみられている。

ルーブルの下落を受け、ロシア中央銀行は3月9日、予算ルールに基づく、30日以内のロシア国内市場での外貨購入を停止することを発表。ロシア財務省は同日、ウラル産原油価格が1バレル当たり42.4ドルを下回った場合、国民福祉基金(注2)の資金を用いて、公開市場での外貨売却を実施すると発表している。モスクワ証券取引所も同日に、国際女性デーの連休明けとなる3月10日に実施される外国為替取引において、過剰な変動を抑制するために取引に一定の制限を設けると発表している。

ロシア政府も、今回のルーブル下落を深刻に受け止めている。ミハイル・ミシュスチン首相は3月9日、ロシア経済の安定性維持に向けた緊急会合を招集。同会合で、アントン・シルアノフ財務相は、原油価格が低調な場合でも、大統領指示による国家プロジェクトの実施を含む国民向けの社会的義務の履行の保証、マクロ経済・金融市場の安定に向けた、安定的な財政出動とそれを可能とする十分なリソースは維持できると指摘した。

大統領府付属ロシア国民経済・行政アカデミー財政・金融学科のユーリ・ユデンコフ教授は、今回のルーブル下落はOPECとの合意不調に基づくものだが、世界的な新型コロナウイルス感染拡大と世界経済指標の低下、対ロシア経済制裁圧力などが、下降トレンドを後押ししていると指摘。ルーブル下落の影響は、ロシア人の外国旅行需要、輸入品の自動車や衣料品、機械類の販売に影響を与えると述べた(大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」3月9日)。

(注1)石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国による枠組み。

(注2)石油天然ガスの輸出余剰金の一部を積み立て、インフラプロジェクトや開発金融機関への資金供給、対外債務返済などに活用されている国家ファンド。

(齋藤寛)

(ロシア)

ビジネス短信 4b0ab50527d75833