カナダ銀行、政策金利を0.5ポイント引き下げ、新型コロナウイルス感染拡大を受け

(カナダ)

トロント発

2020年03月05日

カナダ銀行(中央銀行)は3月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2018年10月以来1.75%で据え置いてきた政策金利を、0.5ポイント引き下げて1.25%にすると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。金利引き下げは2015年7月以来、4年8カ月ぶりとなる。前日(3月3日)に米国連邦準備制度理事会(FRB)が臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決定しており(2020年3月4日記事参照)、市場関係者の間では今回の金利引き下げは広く予想されていた。

カナダ銀行は利下げの理由について、インフレ率は目標達成に近づいているものの、新型コロナウイルスがカナダや世界の経済見通しに大きな悪影響を与える中、G7各国の中央銀行や金融当局がそれに対応しているため、と説明した。

さらに、世界的なウイルス感染拡大による事業活動の停滞に伴って、原油を含めた商品価格が下落し、資源国カナダの通貨下落につながっているとし、ウイルス拡散が続けば、企業や消費者の消費意欲の低迷は避けられず、事業活動がさらに停滞すると予測した。

カナダの2019年第4四半期(10~12月)のGDPは、個人消費や住宅投資は伸びたものの、企業投資や輸出が振るわず、前期比0.3%増(年率換算)に減速した。2020年第1四半期(1~3月)も企業投資の回復は見込めず、(ガスパイプライン建設に反対するための)一部地域での鉄道封鎖、オンタリオ州の教員によるストライキ、冬の猛吹雪による経済活動の鈍化が見込まれることから、現在の経済見通しは前回1月の発表時より​​も明らかに弱くなっているとした。また、必要に応じて、さらに金利を調整する用意があることも明らかにしており、次回4月15日の政策金利判断が注目される。

6月初旬に7年の任期満了を迎える、カナダ銀行のスティーブン・ポロズ総裁は、金利引き下げを阻む要因として、家計の債務水準上昇に対する懸念を繰り返し主張していた。今回の利下げで、カナダ銀行が新型コロナウイルスのリスクに焦点を当て、家計の負債については言及しなかったことについて、トロント・ドミニオン銀行のシニア・エコノミスト、ブライアン・デプラット氏は「金利政策では、目の前にある具体的なリスクが理論上のリスクを上回る場合がある」とコメントしている(3月4日付のトロント・ドミニオン銀行グループ顧客向け調査報告)。

(飯田洋子)

(カナダ)

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