シンガポールとのデジタル経済協定に合意、協力覚書を締結

(オーストラリア、シンガポール)

シドニー発

2020年03月30日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は3月23日、シンガポールのリー・シェンロン首相との首脳会談をテレビ会議形式で開催し、両国間のデジタル経済協定に合意したと発表した。また、貿易円滑化や個人データ保護など同協定に関連した分野で、7つの覚書が両国間で締結された。

オーストラリアとシンガポールのデジタル経済協定とは、デジタル貿易の促進とともに、フィンテックや人工知能(AI)などのデジタル分野の協力を推進するもので、両国は2019年10月、協定の交渉範囲に合意していた(2019年10月21日記事参照)。この協定によって、データセンターの設置義務など、設けずに国境を越えたデータ流通が可能となるほか、ソースコードの保護、互換性のある電子インボイスや電子決済システムの構築、消費者にとって安全なオンライン環境の確立など、企業や消費者がデジタル貿易や経済のデジタル化によって利益を得られる環境を提供する。

両国は、企業や消費者によるデジタル経済の活用を促進するため、(1)データ・イノベーション、(2)AI、(3)貿易円滑化、(4)電子インボイス、(5)電子認証、(6)個人データ保護、(7)デジタルアイデンティティー(注1)に関する協力覚書を締結した。データ・イノベーション分野では、匿名データの共有に関する共同プロジェクトを実施するほか、AI分野では、技術開発や人材育成、倫理基準策定などの協力を行う。また、ペーパーレス取引システムの開発、電子インボイスの共通規格「汎(はん)欧州オンライン公的調達(PEPPOL)」(注2)に基づいた電子インボイスの相互運用、農産物取引での電子認証などを進める。さらに、個人情報やプライバシー保護に関するベストプラクティスの共有、デジタルアイデンティティーを用いた相互認証に関する政策枠組みの開発なども行う。

サイモン・バーミンガム貿易・観光・投資相は「今は多くの企業にとって厳しい時期だが、新型コロナウイルスによる危機を乗り越えた先に、この協定によって、シンガポール市場へ参入する機会が提供されるとともに、デジタル技術の活用が促進され、コスト削減や効率化など実務面での改善がもたらされる」と期待を寄せた。

(注1)デジタル情報として統一的に管理された人やデバイス、サービスなどについての属性情報の集合。

(注2)PEPPOLは電子請求書や電子発注書など電子文書をネットワーク上でやり取りするための規格。

(住裕美)

(オーストラリア、シンガポール)

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