米サンフランシスコ市長、新型コロナウイルスで緊急事態宣言、対策強化目的に

(米国)

サンフランシスコ発

2020年02月28日

米国のロンドン・ブリード・サンフランシスコ市長は2月25日の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に対する市の準備を強化する目的で緊急事態宣言を出した。プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、宣言は市のリソースを動員したり、州や連邦政府による将来的な弁済を可能にしたりする法的文書となる。類似の宣言がサンタクララ郡とサンディエゴ郡でも出ている。

ブリード市長は「サンフランシスコ住民の新型コロナウイルスの感染例はまだ確認されていないが、世界の状況は急速に変化しており、コロナウイルス(の感染拡大)への準備を強化する必要がある。この危害からサンフランシスコ市民を守るために必要な対策を取っていく」と述べた。

会見に同席した同市公衆衛生局のグラント・コルファックス部長は「新型コロナウイルスは世界的に流行しており、新しい段階に入っている」と指摘した。また、同局のトマス・アラゴン保健担当官は「サンフランシスコと中国間の渡航者の多さを考えると、最終的に(サンフランシスコ市で)新型コロナウイルスの感染事例が出る可能性が高まっている」と述べた(注1)。

今回の緊急事態宣言では、学校閉鎖や企業の在宅勤務、病気休暇の見直しを示唆している。

新型コロナウイルスによる風評被害でビジネスに影響も

新型コロナウイルス感染拡大で、ベイエリアのビジネスにも影響が出ている。その1つが風評被害だ。カリフォルニア州のオークランドチャイナタウン商工会議所(Oakland Chinatown Chamber of Commerce、注2)のカール・チャン(陳錫澎)会頭は「レストランをはじめ、オークランドチャイナタウンのビジネスへのマイナスの影響は大きい。観光客も落ち込んでいる。チャイナタウンにウイルスが広がっているなど誤解を招くうわさがソーシャルメディアなどで広がっており、正しい情報を知る必要がある。ビジネスパーソンだけでなく、広く一般の人々にも正しく情報が伝わることを願っている」と述べた(注3)。

また、ベイエリアで開催、または開催予定の国際イベントでも、企業の参加キャンセルが相次いでおり、イベント自体の中止も発生している(表参照)。

表 サンフランシスコで開催済み・開催中・開催予定のイベントへの影響例

(注1)米国全体の状況について、米国疾病予防管理センター(CDC)は2月25日のメディアブリーフィングで、「問題は(新型コロナウイルスによる)重症患者が発生するかどうかではなく、いつ、何人発生するかだ」という認識を示した。CDCによると、2月26日現在、米国では59人の感染が確認されており、うち国内での感染者が14人、海外からの送還者が45人となっている。

(注2)1985年設立。同商工会議所のウェブサイトによると、会員数は150人以上。

(注3)カリフォルニア州オークランド市で2月11日に開催された、新型コロナウイルスや米国で大流行するインフルエンザなど健康に関するワークショップで、ジェトロがインタビューした。このワークショップでは、チャン会頭をモデレーターに、オークランド市が属するアラメダ郡の公衆衛生局の関係者らが新型コロナウイルスへの感染予防策や正しい情報を認識することの重要性を伝えた。

(石橋裕貴)

(米国)

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