空軍機2機で中国滞在ブラジル国籍34人の帰国を支援、軍施設内に隔離

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年02月13日

ブラジル政府は2月7日から9日未明にかけて、武漢滞在者など中国に滞在しブラジルへの帰国を希望するブラジル国籍34人(うち外交官3人、中国人配偶者4人、子供7人)の帰国を支援した。支援には空軍乗務員8人、医師14人、記者2人などが参加し、30人乗りのエンブラエル190VC-2と、より小型のエンブラエルERJ-135LR(VC-99B)の、ブラジル製旅客機2機が使用された。

2機は2月7日に武漢を離陸した後、中国のウルムチ、ポーランドのワルシャワ、スペイン領カナリヤ諸島のラス・パルマス、ブラジル東北部のフォルタレーザで4回の給油離着陸を行い、9日未明にブラジル中部ゴイアス州アナポリスのブラジル空軍基地に到着した。帰国者および支援者含む総勢58人は、同空軍施設に収容された。

施設内では、ホテル宿泊施設とレクリエーション施設などが完備され、世帯ごとに部屋が割り当てられ、乳幼児向けに揺り籠も用意された。外部とは、一切遮断された。帰国者ら総勢58人に新型コロナウイルスを疑う症状はないが、本人への事前了解の下、ブラジル到着日から計3回に分けて鼻と喉から検体が採取され、感染が確認されない場合でも最低18日間、軍施設に滞在することになっている。心理療法を受けることも可能だ。異常がある場合は、軍ヘリコプターで在ブラジリアの空軍病院に移送される。ブラジル保健省は2月11日、帰国者ら58人の初回コロナウイルス検査結果つき、全て陰性と発表している。

ジャイール・ボルロナーロ大統領は2月8日未明、帰国機がブラジル領内に入った時点で、「あなたの国ブラジルへようこそ。われわれは同じ一国民、兄弟であり誰も見捨てることはしない」と、帰還を歓迎するメッセージを送った。

他国による帰国支援が行われる中、ブラジル国内では当初、輸送距離が長く多額の費用がかかることや帰国者らに検疫上の隔離を義務付ける法律が存在しないことから、安全が確保できるか、帰国を支援すべきか、賛否両論が続いていた。そうした中、中国に滞在するブラジル人15人が大統領に対して救出を求めるビデオレターを投稿。これを受けて、ボルソナーロ大統領が帰国支援を決定した。ブラジル政府は、国防省に1,130万レアル(約2億8,250万円、1円=約25円)の支出を認める行政暫定措置(MP)を発令し、ブラジル空軍による帰国支援が実行された。

ブラジル保健省は、1月28日以降連日、新型コロナウイルス感染状況を公表しており、2月11日正午現在では8人の新型コロナウイルス感染の疑いを発表している。これまでに33人の感染疑い者が出ていたが、新型コロナウイルス感染ではないことが判明している。

(大久保敦)

(ブラジル)

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