アルゼンチン外相がブラジル訪問、IMF債務再協議での協力とメルコスールに対する方針を調整

(ブラジル、アルゼンチン、メルコスール)

サンパウロ発

ジャイール・ボルソナーロ大統領は2月12日、ブラジルを公式訪問していたアルゼンチンのフェリペ・ソラ外相と会談を行った。ソラ外相は会談の中で、3月1日に行われるウルグアイの大統領就任式の機会を捉え、ボルソナーロ大統領とアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領との首脳会談を提案した。ボルソナーロ大統領も会談の意向を、自身のツイッターで明らかにした。

ソラ外相は、ボルソナーロ大統領との会談後の会見で、アルゼンチンにおけるIMF債務再協議や今後のメルコス-ル方針、ベネズエラ問題への対応などについて話し合ったことを明らかにした。同外相はボルソナーロ大統領に対し、アルゼンチンのIMF債務再協議にブラジル政府の支援を求める一方で、2019年に政治合意したEUとの自由貿易協定(FTA)を含むメルコスールが交渉中の貿易協定を擁護する発言をしたことを明らかにしている。外相は「メルコスールは前を向くべきで、メルコスールは自ら更新し、世界に目を向けて異なる地域や国々との貿易協定の推進を支持しなければならない」と、大統領に語った。また、「アルゼンチンとブラジルは今まで互いの国に対して異なった理解がされており、本日の会議は非常に重要で状況は大きく変わった」と強調し、ボルソナーロ大統領との会談を評価した。

2月13日付「バロール」紙によると、ボルソナーロ大統領は「ソラ外相が良いニュースを持ってきた。アルゼンチンはEU・メルコスールFTA実現に向けて努力すると語った」と述べている。ボルソナーロ政権はこれまで、アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領をリーダーとする急進左派グループの台頭により、アルゼンチンが開かれたメルコスールへの改革やメルコスールによる世界主要国・地域とのFTA推進の障壁になることを牽制していた。2019年12月10日に行われたアルゼンチンの大統領就任式を、ボルソナーロ大統領は欠席していた。

一方、アルゼンチンでは、マウリシオ・マクリ前政権が金融危機に直面し、2018年にIMFと総額500億ドルのスタンドバイ取り決めによる融資枠組みで合意していた。その後に誕生したフェルナンデス政権は、経済低迷の深刻化を受けて、IMF債務の返済方法をめぐり再協議を開始するとともに、EU各国首脳に同再協議に対する支援を要請していた。

ソラ外相はブラジルを訪問中、エルネスト・アラウージョ外相とも会談した。会談後、アラウージョ外相は「両国が一緒に話し合えば強力な1つの声となる」と強調し、両政府の融和ムードを印象付けた。

今回のソラ外相の公式訪問では、同外相がIMF債務再協議に対するブラジルの協力を求める一方で、メルコスールによる世界主要国とのFTA推進への支持を打ち出すことにより、両国のメルコスールに対する方針調整に向けた糸口をつかんだといえそうだ。ただ、実質的に経済政策が異なる両国がさらに具体的に歩み寄るには引き続き課題が多く、今後の動きを注視していく必要がありそうだ。

(大久保敦)

(ブラジル、アルゼンチン、メルコスール)

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