データ経済で注目される社会課題解決型テクノロジー

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年02月10日

ブラジル日本商工会議所は1月29日、現地大手銀行ブラデスコが運営するイノベーションハブInovabraで、「データ経済」を1つのキーワードにした第5回イノベーション研究会(注)を開催した。約40人が参加した。第5回研究会を担当・主催したデロイトは、企業の意思決定やコスト削減、効率化、新製品・サービスの創出には「データ」が重要とし、スタートアップ企業こそが各市場の新たな嗜好(しこう)や行動パターンなど、イノベーション促進にヒントとなるデータを活用する存在だ、と説明した。

続いて参加者たちは、ブラジルで注目すべき3分野(モビリティー、ヘルステック、フィンテック)に分かれ、デロイトの専門家から以下の説明が行われ、スタートアップ企業と参加者たちを交えた意見交換を促した。

モビリティー分野は、サンパウロをはじめ、都市部の人口過密が課題となっており、公共交通手段を補うライドシェアや電動キックボードレンタルによる移動手段が登場していることを説明した。同分野はインフラ開発政策と密接にかかわる分野であることや、安全性などの観点から市や州政府などの理解を得る必要があることについて意見交換した。さらに、スタートアップ企業のサービスは既存の規制に当てはまらないことがあるが、安価で利便性の高いサービス提供が都市交通の問題を解決し、そこから得られるデータをスマートシティ実現につなげる視点で取り組む価値があるとした。

ヘルステック分野については、現在の問題点として、医療の現場でサービスの質に高低があること、データが統合されていないこと、の2点を挙げた。ブラジルでは、高額な医療保険を支払った顧客は私立病院で高度医療を受けられるが、保険に加入できない国民はSUS(統一保健医療システム)と呼ばれる制度の下、無料で受診できる公立病院で質の低い医療サービス受けるしか選択肢がない。従って、これらを解決するためのテクノロジーが求められている、と説明した。Appiaというスタートアップ企業は、スマートフォンで糖尿病患者の血糖値をモニタリングするサービスを提供しており、ルーティンの血糖値測定を自宅で実施可能にすることで、病院ではなく患者自身がデータを保有し、複数の医療機関とデータ統合し、受診できるシステムを紹介した。

フィンテック分野については、ブラジルでは既に比較的成熟市場となっており、ブロックチェーンを絡めた技術が生まれていることを説明した。Ewallyというスタートアップ企業は、銀行口座開設が難しい顧客層にプリペイドカードとリンクしたオンライン口座を開設し、ケースに応じて無料もしくは安価な手数料で送金や支払いができるサービスを提供している。

次回の第6回イノベーション研究会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、日本人が現地で興した企業のBrazil Venture Capitalが、日本とブラジルのスタートアップ・エコシステムや起業環境について、日本の有力ファンドとともにパネルディスカッションを実施する予定(2月27日、場所:サンパウロ・ジャパンハウス)。

(注)イノベーション研究会とは、在ブラジル日系企業と現地スタートアップの協業可能性を探るため、ブラジル日本商工会議所内に設置されたグループ(2019年5月発足)。2020年1月現在、在ブラジル日系企業を中心とする38社で構成されている。代表幹事はジェトロ、共同幹事はBrazil Venture Capital、KPMG、デロイト。

(古木勇生)

(ブラジル)

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