新型コロナウイルスでベトナム経済にも打撃

(ベトナム)

ハノイ発

2020年02月21日

ベトナム計画投資省は2月12日、新型コロナウイルスの影響が長期化する場合、GDP成長率が6%を下回るという予測を明らかにした。政府は2020年のGDP成長率目標を6.8%に定めているが、新型コロナウイルス感染が2020年第1四半期(1~3月)まで続く場合、2020年のGDP成長目標は6.25%(当初目標より0.55ポイント減)、第2四半期中(4~6月)まで及ぶ場合、5.96%(同0.84ポイント減)になるとの見通しを示した。また、ベトナムはシンガポールやタイ、香港に次いで、新型コロナウイルスによる経済面での打撃が大きいと指摘した。

ベトナムでは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国本土とのフライトを停止にするなど、中国との往来を制限している(2020年2月5日記事参照)。その結果、航空業界のほか、観光業への打撃も大きく、既に失業者も多数出ているという。中国との国境ゲートが一時封鎖されるなど、物流面での影響も顕在化している。ベトナム産のスイカやドラゴンフルーツなどの農産物は、国境ゲート経由の輸出が止まり、取引価格の大幅な下落を招いている。

国内の生産活動にも影響は及んでいる。中国での生産や物流の停滞を受け、中国から部材輸入の遅れが生じるなど、サプライチェーンの乱れが起きている。また、中国人従業員を抱える企業では、旧正月で帰国していた中国人従業員がベトナムに戻れなかったり、戻っても隔離措置が必要だったりと、支障を来している。

グエン・スアン・フック首相は2月12日の新型コロナウイルス対策会議で、現時点では成長目標を修正する理由はないと述べ、計画投資省に対して2020年後半の成長を主体にGDP成長率を6.8%に維持する計画を作成するよう求めた。併せて、新型コロナウイルスへの対策とともに、経済の停滞を防がなければならないと強調し、経済の活性化策、公的債務返済の加速、金利や手数料の引き下げなどを検討するよう指示した。

ベトナムでは2月19日午前時点で16人の感染(そのうち14人は治癒)が報告されている。感染の疑いがある者のうち1,137人が検査で陰性と判明したが、34人は隔離して監視下に置かれている。

(庄浩充)

(ベトナム)

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