ラゴス州主要区域でバイク・三輪タクシーの営業禁止、配車アプリのスタートアップ打撃

(ナイジェリア)

ラゴス発

2020年02月17日

ナイジェリア・ラゴス州政府のベンガ・オモトソ情報戦略コミッショナーは1月27日、州内37行政区のうち、中心市街区や住宅密集地がある15行政区をはじめ、州内50の幹線道路、40本の橋や陸橋で、オートバイタクシー(オカダ)と三輪タクシー(ケケ)の運行を2月1日から禁止すると発表した。発表のほぼ半月前にラジオ局が同様の措置を報じたが、州政府は否定していた。州警察広報官は、2月1日の施行後、違反したオートバイ188台、三輪タクシー78台を押収、ドライバー40人を逮捕したと述べた。

通勤者は、一部の路線に限られる大型バスや個人営業の小型バス(ダンフォ)以外の交通手段を失い、バス停から長距離の徒歩を余儀なくされている。また、自家用車による通勤が増えたため、市街地の渋滞は一層深刻になっている。小型バスの運賃をつり上げる動きもみられる。

写真 渋滞するラゴス中心市街区にまたがるファロモ橋(ジェトロ撮影)

渋滞するラゴス中心市街区にまたがるファロモ橋(ジェトロ撮影)

オモトソ・コミッショナーによると、2016~2019年に国立総合病院だけで1万人以上がバイクタクシーと三輪タクシーに起因する事故で治療を受け、600人以上が死亡した。交通安全の確保が禁止措置の目的だとしている。法的根拠は2012年に成立した州法と2018年成立の運輸セクター改革法だが、これまで施行されていなかった。この2法では、エンジン排気量が200cc以上のバイクタクシーは対象外だったが、今回の措置は排気量にかかわらず禁止とした。Gokada、MAX(Metro Africa Xpress)、ORideといったバイクタクシー配車アプリのスタートアップや、それに加盟するドライバーから不満の声が上がっており、失業した大勢のドライバーらが州政府庁舎に向かってデモ行進した。

配車アプリのスタートアップはサービスに支障を来している。ヤマハ発動機も出資するMAXのアデタヨ・バミドゥロ最高経営責任者(CEO)は当地の大手紙「PUNCH」の取材に対し、「これまで1,000万ドルを投資し、ドライバーへのバイク購入資金融資などに500万ドルを投じてきた。ドライバーに安全運転研修やヘルメット着用、制限速度順守、運転中の通話禁止など義務付けている。アプリを通じてドライバーの動きも監視しており、個人営業のドライバーより事故率が極めて低い。サービスを開始して2年半、現在の登録ドライバーは2,000人、累計200万回以上運行し、事故発生は約100件、重傷を伴う事故は7回、死亡事故はゼロだ。州政府は全ての業者を一斉に禁止するのではなく、一定の規制を導入すべきだ」と批判している。同CEOはさらに「当社は州・連邦政府に所得税を支払い、各ドライバーは毎年3万ナイラ(約9,000円、1ナイラ=約0.3円)のライセンス料と、バイクタクシー組合に1日500ナイラ支払っている。州政府が正当な手続きを経たのか不明だが、2019年半ば、配車アプリ企業に対し管理バイク1,000台につき2,500万ナイラを求めてきた」と述べた。

同業種のGokadaは500万ドル、セコイア・チャイナが主に出資したOPayが出資したORideは4,000万ドルをバイクタクシー事業に投じている。拡大を続ける市場を目指して多くのスタートアップが操業する中、突然の規制導入などがビジネス環境に影響を与えることが懸念される。

(西澤成世)

(ナイジェリア)

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