肥料製造プラント建設プロジェクト、日系企業・金融機関・政府機関が連携して支援

(バングラデシュ)

ダッカ発

2020年01月22日

国際協力銀行(JBIC)と三菱UFJ銀行、香港上海銀行東京支店の2行(以下、本邦民間金融機関)は2019年11月21日、バングラデシュの国営バングラデシュ化学工業公社(BCIC)と、同社の肥料製造プラントを新設する「ゴラサール・プロジェクト」に関する融資合意書を締結した。本プロジェクトは、三菱重工業と丸紅が同国最大規模の生産能力を持つ肥料製造プラントの設計・調達・建設(EPC)を、中国化学工程第七建設と共同で手掛けるもので、必要な資金は13億ドルに上る。同資金の6割をJBICと本邦民間金融機関が協調融資、残り4割を本邦民間金融機関が世界銀行グループの多数国間投資保証機関(MIGA)保証付きで融資する。後者の本邦民間金融機関による融資に対しては日本貿易保険(NEXI)が保険の引き受けを行う。

肥料製造プラントは、首都ダッカの北東約50キロに位置するノルシンディ県に建設される予定で、2022年の完成を予定している。同国で産出される天然ガスを用いて、肥料原料であるアンモニア(日量1,600トン)、尿素(2,800トン)が生産される拠点となる。本プロジェクトでは、三菱重工業の高い二酸化炭素(CO2)回収技術により、同じ天然ガスの使用量で肥料生産量は現在の3倍になる見込み。バングラデシュにとっては、肥料の高効率な国内生産の実現により輸入が減少し、年間で1億ドル以上の外貨を節約できる見込みだ。

締結式に出席したヌルル・マジッド・フマヨン工業相は、「工業化の推進役である日本からの支援を受けた本プロジェクトは、バングラデシュの工業化と日本・バングラデシュ間のさらなる関係強化に向けた象徴になると確信している」とし、高い期待を示した。

バングラデシュは、雨期(6~10月)には国土の約3分の1が1メートル以上の冠水に見舞われるため、耕作地拡大の余地はほとんどなく、化学肥料を用いた農業生産性の高い食糧増産を行うことが極めて重要とされる。こうした背景から1972年、世界銀行および国際協力機構(JICA)の支援によってゴラサール肥料工場が操業を開始し、その後、幾度も補修されたものの、設備の老朽化による生産性の悪化が進んでいた。

丸紅は、1950年代からバングラデシュに進出し、積極的にビジネスを展開しており、本プロジェクトはKAFCO(注)への出資(1981年~)に続き、同社にとって2例目の肥料製造案件となる。また、三菱重工業は、1992年に現地企業JFCL(Jamuna Fertilizer Company Ltd)向けに肥料工場を建設した実績を有し、現在も同社から当該工場にスーパーバイザーの派遣、予備品供給を行っている。

写真 2019年12月1日には要人出席の下、ローン締結のポスト・サイン・セレモニーが実施された(丸紅提供)

2019年12月1日には要人出席の下、ローン締結のポスト・サイン・セレモニーが実施された(丸紅提供)

(注)KAFCO(Karnaphuli Fertilizer Company)。チョットグラムにある輸出指向型外資合弁企業で、バングラデシュ化学工業公社が43.51%、JBIC、丸紅、千代田化工建設が出資して設立したKAFCOジャパンが31.29%の持ち分を有する、化学工業公社の関連会社だ。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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