EU、新型コロナウイルスの域内感染拡大を警戒

(EU)

ブリュッセル発

2020年01月29日

公衆衛生などに関わるEU専門機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)は1月28日、中国湖北省武漢市などで感染事例が報告されている「新型コロナウイルス」問題で前日の27日に、ドイツ・バイエルン州でも1人の感染事例をドイツ当局が確認したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。これまでにフランスで3人の事例が確認されており、現時点での欧州における感染者数は4人に達したとしている。

欧州での域内感染抑止に向けて水際対策を急ぐEU

ECDCの発表によると、今回のドイツでの感染事例は、ドイツに滞在していた中国からの渡航者と接触した結果という。中国からの渡航者は、渡航前に武漢地域から来訪した親族と(中国国内で)面会していたとする。ECDCは湖北省で猛威を振るう同ウイルスの現状を勘案すると、今後、欧州でさらなる輸入症例が発生する可能性があるとしている。さらにその結果、局所的ではあるとしても、欧州での域内感染(中国からの渡航者との直接的な接触ではない事例)も、今後想定されるという。

その一方でECDCは、今回の感染事例確認をもって、EUを含む欧州経済領域(EEA)(注)市民の同ウイルスへの感染可能性を「中程度」とする評価(2020年1月27日記事参照)を現時点で見直すことはないとの立場を表明。ただし、EEAで感染事例が確認された場合、各国当局は地域や医療機関での感染拡大を抑えるため、迅速かつ厳格な感染予防管理措置を進めるべきと注意を呼び掛けた。

欧州航空安全機関は航空関係者に対し当局への協力を勧告

他方、航空行政を所管するEU専門機関の欧州航空安全機関(EASA)は1月27日付で、同問題に関わる「安全情報通報(SIB)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発行。EU域内の航空安全当局や空港、航空サービス事業者に対して、同ウイルス感染事例が確認されたフライト利用者の特定・追跡のために公衆衛生当局に協力することなどを勧告している。勧告のポイントは次のとおり。

  • 航空サービス事業者は、その乗務員に対して、搭乗者に急性呼吸器感染症の症例が確認された場合の対処法に関する情報を提供すること
  • 航空サービス事業者および空港運営事業者は、その乗務員やスタッフに対して、急性呼吸器感染症の兆候を示し、かつ中国に滞在あるいは中国からの渡航者と接触歴のある乗客を特定するように促すこと
  • (同ウイルスの)影響を受ける国々で旅客路線を運航する航空サービス事業者は、潜在的な感染可能性がある搭乗者の支援に当たる乗務員のために、ユニバーサル医療キットを装備すること
  • 航空サービス事業者は、中国で乗り継ぎした乗務員に対して、中国当局が勧奨している備品を提供、当該機器(その利用法など)について周知すること
  • 航空サービス事業者および空港運営事業者は、公衆衛生当局と可能な限り連携し、同ウイルス感染事例が確認されたフライト利用者の特定・追跡のために協力すること

(注)EU加盟28カ国と、スイス以外のEFTA加盟国(ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)の31カ国で構成される。

(前田篤穂)

(EU)

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