2019年の北米自動車労働協約、医療負担の据え置きや賃上げなどで合意

(米国)

ニューヨーク発

2020年01月08日

全米自動車労働組合(UAW)は2019年12月11日、フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)との労働協約に合意した。これにより、米国系大手自動車メーカー3社のゼネラルモーターズ(GM)、フォード、FCAの順で、7月15日からそれぞれ行われてきた交渉は全て終了した。今回の3社の合意内容は2023年9月14日まで有効となる。

今回の交渉では、3社ともに医療保険、非正規雇用者の待遇、雇用の確保、時給制ワーカーの待遇改善などが主な争点となった。とりわけ医療保険に関しては、例えばフォードの時給制ワーカー向けの医療保険にかかるコストが、2020年に初めて10億ドルを超える見込みなど(「ブルームバーグ」電子版2019年3月12日)、企業への負担が増していることから、今回3社は、従業員の掛け金負担の割合を米国の平均的水準である18%前後(注)に引き上げることなどを要求してきた。しかし3社とも合意に達せず、前回の協約水準に据え置かれることになった(GMとフォードの従業員負担の割合は3%)。

そのほか、非正規雇用者の待遇に関しては、GMとフォードが、勤務年数3年以上の従業員の正規雇用への転換を可能とする内容を盛り込んだ。また雇用の確保に関しては、GM、フォード、FCAがそれぞれ77億ドル、60億ドル、90億ドルの投資(新規、拡張を含む)を約束したほか、9,000人、8,500人、7,900人の雇用の創出・確保に合意した。協約発効日の前から勤務を開始し、一定の年数を勤続したフルタイムの時給制ワーカーの待遇改善に関しては、3社ともに2015年の協約どおり段階的な昇給の仕組みを採用したが、今回の交渉の結果、GMが時給の上限を2015年の協約の15.4%増に当たる32.32ドル、フォードとFCAが6.1%増の29.71ドルへと大幅に引き上げたほか、上限に達するまでの期間を、これまでの8年から4年に短縮することで、3社それぞれが合意した。UAWと3社の主な合意内容は表のとおり。

表 UAWと北米主要自動車メーカー3社の合意内容

他方で、このように企業側の譲歩が目立つ一方、GMはオハイオ州、ミシガン州、メリーランド州の3工場の閉鎖、フォードはミシガン州のエンジン工場の閉鎖などを盛り込んだ。電気自動車や自動運転車など次世代車へのシフトが進む中、各社とも生産設備の合理化が経営上の重要な課題になっている。

(注)カイザー財団の調べ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、企業が付保する健康保険の掛け金に対する従業員負担の割合は全米平均で18%。

(大原典子)

(米国)

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