2019年のスタートアップ投資額、前年比35%増の62億ユーロに拡大

(ドイツ)

ベルリン発

2020年01月24日

会計コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤングが1月14日に発表したドイツのスタートアップの資金調達に関する調査によると、2019年のスタートアップの調達資金総額は62億ユーロとなり2018年の46億ユーロから35%増加、スタートアップへの投資ブームが続いている。

地域(州)別でみると、スタートアップに資金が最も集まった地域は2018年に引き続きベルリン、次いでバイエルンだった。ベルリンには2019年のスタートアップ投資額の約6割を占める37億ユーロ(2018年は26億ユーロ、前年比42%増)の投資があり、投資件数(注)も244件(2018年は227件、同7%増)となった。自動車産業をはじめとする製造業の集積地である南部のバイエルンでは、投資金額は16億ユーロと前年の8億ユーロから倍増し、投資件数も2018年の116件から123件へ増加した。大型資金調達の上位5件のうち、3件がベルリン〔ゲットヨアガイド(GetYourGuide)、フロンティア・カー・グループ(Frontier Car Group)、N26〕、2件〔フリックスモビリティー(FlixMobility)、セロニス(Celonis)〕がバイエルンで行われたことが両州の投資金額を引き上げた要因となっている。

セクター別の投資額ランキングでは、モビリティー(16億ユーロ、前年比3.9倍)が1位となり、フィンテック/インシュアテック(13億ユーロ、同1.9倍)、ソフトウエア・分析(12億ユーロ、同1.8倍)分野が続いた。モビリティーにはトラベルレジャーや自動車、物流などのサブセクターが含まれ、投資額増加の要因にはフリックスモビリティー〔人工知能(AI)を活用した低価格長距離バス〕とゲットヨアガイド(現地ツアーのオンライン予約)の大型資金調達もある。

これまでドイツのスタートアップシーンを牽引してきたEコマースは減速し、7億ユーロと前年比56%減となった。

EYドイツのパートナー、ペーター・レナーツ氏は「シリコンバレーに比べて評価額がまだ低い欧州のスタートアップ企業は、米国やアジアなどの外国投資家の関心を集めている。2019年のアーリーステージの小規模投資ラウンドも前年から27%増えており、資金の流動性が高まっている。ドイツのスタートアップ企業が海外投資家から大規模な資金調達をするには、当初から海外展開を視野に入れたビジネスモデルを構築する必要がある」と述べている。

また、EYドイツのフーベルト・バート最高経営責任者(CEO)は「製造業の基幹部門に危機が迫る中、デジタル経済が雇用創出の源泉として重要性を増す。一方、デジタル分野では人材が不足しており、連邦政府は税制、教育などで支援すべきだ」とコメントした。

(注)資金調達を受けた企業数ベース。

(中村容子)

(ドイツ)

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