ETAによるスウォッチグループ外への部品供給が一時的に停止、競争委員会が供給義務延長の要否の判断を先送り

(スイス)

ジュネーブ発

2020年01月08日

スイス連邦競争委員会(COMCO)は12月19日、スウォッチグループ傘下のETAに対するグループ外の時計メーカーへの駆動部品(ムーブメント)供給義務の延長の要否を、2020年夏に決定すると発表した。これにより、グループ外の時計メーカーへのムーブメントの供給は、2020年1月から一時的に停止している。

ETAは1973年設立の世界最大級の時計・ムーブメントの製造事業者で、1985年にスウォッチグループの一員となった。スイスの時計メーカーの大半は、ETAを含むスウォッチグループが生産するムーブメントを調達し、腕時計を製造してきた。

しかしスウォッチグループは、ETAのムーブメントの買取価格が一向に上がらず、他メーカーが、技術力を要するムーブメントへの投資をせずに組み立てとマーケティングで利益を得ているとして、2002年には、ETAのグループ外への供給を2006年1月までに取りやめる方針を発表した。COMCOはこれを、ETAの優越的な地位の乱用に当たるとして、2002年と2004年にグループ外への供給を義務付けた。

しかし、その後もスウォッチグループは、グループ外へのETAムーブメントの値上げ、また供給量削減方針を変えなかったことから、COMCOは2009年と2011年に競争法に関する審査を行った。2013年10月にCOMCOとETAは、段階的に供給量を減らしつつも2019年12月末まではグループ外へのムーブメント供給を継続することについて、あらためて合意した。

期限に先立ち、COMCOは2018年11月から市場調査を開始したが、2019年中に終わらず、グループ外への供給停止を認めるかを含め、競争法上の審査は2020年夏ごろ、遅ければ年末までかかる見込みだ。結論が出るまでは、ETAに部品の納品を義務付ける暫定措置を講じてはいるが、生産の都合上、ETAには6カ月前までに注文することになっており、また2020年1月以降はETAに受注の義務がなくなることから、グループ外への供給は2020年1月1日以降いったん停止することになった。例外として、グループ外の中小時計メーカーへの新規供給は可能だが、その場合には全ての希望事業者に応える義務があるとしている。

この6年間で登場した代替ムーブメントメーカーは、中小事業者のセリタなどわずかで、COMCOの審査結果によってETAのグループ外供給の全量を停止し、ETA製品以外への切り替えが認められるとは予想しづらい。しかし、時計の製造には半年程度のリードタイムがかかることから、少なくとも2020年中は、多くのスウォッチグループ外の時計メーカーは、部品在庫内での製造に抑えるか、ほぼ選択肢のないグループ外からの調達に切り替えるかの選択を迫られる。今回の決定の遅れは、多くの事業者に影響を与えそうだ。

(和田恭)

(スイス)

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