トランプ米政権、イラン制裁を強化、鉄アルミ関連取引を一層制限

(米国、イラン)

ニューヨーク発

2020年01月14日

トランプ政権は1月10日、イランに対する経済制裁の強化を発表した。イランによるイラクの米軍基地へのミサイル攻撃を受けたもので、イランの鉄鋼企業などが制裁対象となった。制裁は指定されたイラン企業に限らず、それら企業と取引関係を有する外国企業にも科されることとなっており、今後も制裁対象が広がる可能性がある。

中東最大の鉄鋼企業を制裁対象に

スティーブン・ムニューシン財務長官は1月10日、マイク・ポンペオ国務長官とともに記者会見を開き、17社のイラン企業を制裁の対象に指定すると発表した。同日に発表された大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、その要件に合致した法人・個人を対象に指定したかたちだ。財務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、指定企業は、中東最大の鉄鋼メーカーであるモバラケ製鉄所を含む鉄鋼やアルミニウム、銅の製造企業となっており、対象企業が米国内に保有、または今後米国内で保有することになる資産が凍結される。また、制裁対象の「米国人(United States person)」(注)が所有・支配する資産も凍結される。

また、トランプ政権は2018年5月にイランの鉄鋼やアルミニウム、銅産業を対象とした制裁にかかる大統領令13871を発表していたが(2019年5月14日記事参照)、今回の大統領令でさらに建設業や鉱業、製造業、繊維産業を制裁対象に加えた。今後も財務長官と国務長官が協議の上、大統領令の要件に合致すると判断した法人・個人が対象に追加される可能性がある。ムニューシン財務長官は、今回の措置で数十億ドル規模でイラン政府の資金源を断てるとの期待を示している。

イラン以外の法人・個人も制裁対象となる可能性

これらの制裁はイランに拠点を置く企業だけでなく、海外でイランと関わりのある外国企業も制裁の対象となる。具体的には、今回の大統領令で指定されたイランの産業に意図的に関与したり、制裁対象に指定された法人・個人を支援したような場合、同様の制裁が科される。外国の金融機関がそうした関与・支援した場合も制裁対象となる。実際に、イランで製造された鉄鋼製品の輸入やイランでの製造に必要な原材料の供給を行う在中国の貿易会社なども前回の大統領令に基づき、制裁の対象に指定された。ムニューシン財務長官は会見で、「今回の措置は2次制裁も含む」と明言している。

また、今回の措置では、イランが1月8日にイラクの米軍基地を弾道ミサイルで攻撃したことに関わったとされるイラン政府関係者8人も制裁対象に指定している。これら制裁対象は米国への入国も拒否される。

(注)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(藪恭兵)

(米国、イラン)

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