中東情勢緊迫化を受け、在留フィリピン人に強制帰国命令

(フィリピン)

マニラ発

2020年01月24日

フィリピン労働雇用省(DOLE)は1月8日、イランによる在イラク米軍への報復攻撃を受け、イラン、イラク、レバノンに在留するフィリピン人に対して強制帰国命令を発令した。

ドゥテルテ大統領は在留フィリピン人の本国帰還を支援するため、フィリピン国軍を中東に派遣すると発表。国防省のデルフィン・ロレンザナ次官は地元メディアに対して、フィリピン国軍の中東派遣は戦闘を行うためではなく、あくまで在留フィリピン人を保護するためと強調した。

一方で、中東情勢の緊迫化を受け、フィリピン国内のガソリン価格は1リットル当たり1.04ペソ(約2.18円、1ペソ=約2.1円)、ディーゼル価格は0.69ペソ上昇した。2019年通年のインフレ率は2.5%と、2018年の5.2%から半減したが、エネルギーの輸入依存度の高いフィリピンは、今後の中東情勢の展開次第ではインフレのリスクが懸念される。

フィリピンとしてさらに懸念するのは、中東諸国に在留するフィリピン人出稼ぎ労働者からの送金の減少だ。2019年1月から10月までにフィリピンが国外から受け取った送金は248億5,849万ドルに上り、うち中東諸国は約2割に当たる50億510万ドルをフィリピンに送金している。また、中東の在留フィリピン人が帰国した場合に、職に就ける保証はなく、国内の失業率の上昇にもつながりかねない。

DOLEは2019年12月、サウジアラビアで働くフィリピン人労働者に対して総額46億ペソに上る給料不払い金額が発生しているとして、サウジアラビアへの労働者派遣人数を削減すると発表していた。また、2019年12月にクウェートで発生した雇用主によるフィリピン人家政婦の殺害事件の発生を受けて、フィリピン海外雇用庁(POEA)は2020年1月3日、クウェートへの新規派遣申請を全面却下すると発表していた。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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