ニッケル業界が中国と覚書、インドネシアの禁輸措置見据え中国の巨大EV市場開拓へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月03日

ニッケル鉱山を運営する資源大手企業などで構成されるフィリピンニッケル産業協会(PNIA)は11月15日、中国のバッテリー関連企業で構成される中国化学物理電源業界協会(CIAPS)との間で、中国の電気自動車(EV)市場開拓のための覚書を締結したと発表した。11月25日付のフィリピン各紙が報じた。

両協会は今回の覚書の締結によって、巨大化する中国のEV市場を見据え、両国のニッケルに関する政策、貿易、投資に係る情報共有を進め、合弁での事業会社の設立や、会員企業への相互出資といった事業提携を進めていくとした。

PNIAのクラレンス・ピメンテル会長は、世界のニッケル需要量の半分以上を消費するニッケルの巨大需要家である中国との提携がフィリピンにもたらす恩恵は大きいとした上で、「インドネシア政府がニッケル鉱石の輸出を2020年1月から禁止する方針を打ち出したことにより、フィリピンの2020年のニッケル生産がどのような成長をみせるか楽しみにしている」と述べた。

インドネシア政府は8月、国内のニッケル精錬所へのニッケル鉱石の供給量を確保するため、当初2022年1月としていたニッケル鉱石の禁輸措置の発動を、2020年1月に早めることを発表した。インドネシア政府の方針を受け、フィリピンは2020年に世界最大のニッケル生産国となる見通しだ。2018年のニッケル鉱石生産量はインドネシアが56万トンと世界最大で、フィリピンは34万トンで2位だった。PNIAによると、インドネシア政府の当該方針発表を受け、2019年の年初に比べてニッケルの価格は25%程度上昇している。

フィリピン統計庁(PSA)によると、2018年のフィリピンのニッケルおよびその製品(HSコード第75類)の輸出額は3億8,441万ドルで、うち99.5%に当たる3億8,248万ドルを日本に輸出している。一方、中国向け輸出は2018年に1万5,000ドルにとどまり、輸出先国別で8位だ。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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