2020年のGDP成長率を1.7%、2021年は1.2%と予測

(スイス)

ジュネーブ発

2019年12月27日

経済省経済事務局(SECO)は12月12日、スイスの2019年の実質GDP成長率を0.9%、2020年を1.7%、2021年を1.2%とする予測を発表した(表参照)。前回9月の予測から2019年は0.1ポイント上方修正し、2020年は同率だった。SECOは2020年の成長の加速と2021年の減速は主要スポーツイベント(注)の影響によるものとした。

表 SECO経済予測(2019年12月12日発表)

2019年は設備投資と輸出に支えられた拡大基調からの減速が明確になり、2020年も同様の状況が続き、2021年にはやや回復するとしている。

これは、欧州、中でも最大の貿易パートナーであるドイツの経済成長の鈍化が予測されるためだ。特に機械・金属製品の輸出の減速により、2020年の財貨の輸出の伸び率は過去4年間をはるかに下回るとみられる。輸出需要の減速により、工場の稼働率、設備投資も伸び悩む見込み。加えて、空室率の増加と人口増加率の鈍化により、建設投資も抑制されるとした。対照的に、消費は緩やかに回復すると予測されている。これは、雇用市場の安定性とインフレ率の低下に支えられている。なお、2020年は原油価格の下落により、インフレ率が大幅に低下する可能性がある。

2021年は、国際的な経済回復に伴いスイスの輸出が好転することで、設備投資も2.5%に回復すると予測している。しかし、過去2年間の低成長を受け失業率は2.6%に上昇すると予測している。

国際情勢については、秩序のない英国のEU離脱(ブレグジット)の可能性が下がり、米中貿易摩擦が緩和してはいるものの、米国が欧州に対する課税を行う場合や、もし英国が秩序なくEUを離脱して、EU経済が急減速する場合などには、スイス経済も下振れリスクを抱えているとした。

スイス国立銀行(SNB)は12月12日、預金金利をマイナス0.75%に据え置くと発表した。スイス・フランの全通貨に対するレートは2019年9月から変化していない。一方、スイス・フランは国際的にいまだに高く評価されており、フラン高抑制のために為替介入もいとわないとした。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部が置かれているため、オリンピック、サッカーのワールドカップ、欧州選手権の開催年には、放映権収入がスイスのGDPを押し上げ、翌年のGDPにはマイナスに作用する。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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