新政権下で復活目指すフリーゾーン、州政府や企業なども優遇措置期待

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年12月19日

アルゼンチン最南端のティエラ・デル・フエゴ州に1972年に設けられたフリーゾーンが今、アルベルト・フェルナンデス新政権下で再び注目を集めている。

フリーゾーンで製造・加工された製品には、所得税や付加価値税、関税などが免除されており、アルゼンチンで製造・加工されるテレビや電子レンジ、エアコン、携帯電話の90%以上がこの地で生産されていると、12月11日付「iプロフェショナル」紙が報じている。マウリシオ・マクリ前政権では、自由貿易を推進し、輸入制限を緩和して外国製品の関税を引き下げた一方、フリーゾーン内で加工された製品は競争力を失った。例えば、エレクトロニクス産業から農水産業までさまざまな輸出入ビジネスを手掛けるニューサンの域内生産量は2015年から現在までに50%近く減少し、同州で働くニューサンの従業員は1万3,500人から8,500人まで減ったと、11月22日付「ラ・ナシオン」紙は報じた。マクリ前大統領は、同州で力を入れるべきはエレクトロニクス産業保護ではなく、漁業やガス探査などの天然資源産業の推進だと主張し、2023年12月31日で有効期限が満了となるフリーゾーン制度の存続自体も危ぶまれていた。しかし、フェルナンデス新大統領は選挙中の8月7日、ティエラ・デル・フエゴ州のグスタボ・メレージャ知事と会談し、大統領になれば制度を継続することを約束した。新政権発足を受け、同州政府や州組合などの関係者らは、税制の恩典が2073年まで適用されることを期待している。

関係者らはまた、期間の延長だけでなく、フリーゾーンからの輸出量を増やすための制度構築を希望している。例えば、現在はフリーゾーンから輸出する際のメリットは設けられていないが、今後はVATや輸出関税の免除、払い戻しなどの税制上の優遇措置を設けることで、国際競争力を高め、国外市場を開拓し、外貨獲得につなげたいとしている。

さらに、国内企業からもフリーゾーンへの期待が寄せられている。11月22日付「ラ・ナシオン」紙によると、ニューサンのルイス・ガリ社長は、フリーゾーンにおける現在の税制優遇品目(テレビ、電子レンジ、エアコン、携帯電話など)に加えて、自動車部品やソーラーパネル、センサー精密機器、アグリビジネスに利用される電子機器、クリーンエネルギー関連製品など、他国と競合しないような高付加価値のある製品を追加するよう、新政権に要請する意向だと発表した。

(津下みなみ)

(アルゼンチン)

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