豊田通商出資のジップライン、ガーナでドローンによる医薬品配送

(ガーナ)

ラゴス発

2019年12月05日

豊田通商が出資している、米国サンフランシスコのロジテック(物流技術)スタートアップのジップラインは、アフリカ大陸でルワンダに次ぐ2番目の展開先としてガーナを選んだ。同社のエトナム・コムラ・ブアミ渉外コンサルタントは11月29日、ジェトロに対し、ガーナ政府から早い段階で強い関心が寄せられ、都市から離れた遠隔地にも幅広く、速やかに緊急用の医薬品を届けるニーズにマッチしたからだと話した。

米国本社がファンドから集めた資金で土地、設備、機器やソフトウエアなど全てを賄い、保健省から配送料のみを収入として得るビジネスモデルだ。医薬品は保健省から預かるだけで、医薬品代金は配送先の医療施設が保健省に直接支払う。カントリーマネジャー以下全てのスタッフがガーナ人で、将来的には自分たちでガーナの実情に、よりマッチしたシステムを開発したいとしている。

ジップラインが2019年4月にガーナで飛行機型のドローンを用いて医薬品を配送するオペレーションを開始して以降、最初に設立した基地局「オメナコ(Omenako)」の配送先が120カ所に達した。この基地局は首都アクラから北へ60キロ離れたスフム(Suhum)地区にあり、保健省が運営する地域医療センターが販売する医薬品や輸血用血液の取扱量の約20%の在庫を置いている。取扱品目は148種類に上る。

カーボンファイバーと発泡スチロールでできた飛行機型ドローンは長さ2メートル、重さ11キロで、9キロのバッテリーを搭載し、最高時速は101キロ、最大1.7キロの医薬品を運ぶことができる。オメナコ基地局には冷蔵設備完備の医薬品・輸血用血液の倉庫と20機のドローンがあり、スタッフは約30人で半数は女性だ。雨天も関係なく24時間体制で運営しており、現在1日約45件を受注している。全てのスタッフが担当の持ち場を毎日ローテーションし、全ての作業を理解し実施できるようにしている。

写真 飛行準備を整えるドローン(ジェトロ撮影)

飛行準備を整えるドローン(ジェトロ撮影)

最も遠い配送先は北にある湖を渡った先の片道80キロの地点で、片道45分かけて運び、医療施設上空で箱を落として、基地局まで戻ってくる。陸路ならば自動車とフェリーを乗り継いで6時間かかる場所だ。

ドローンは、カタパルト(発射台)から勢いをつけて発射する。GPSによる位置情報把握と最先端の自律航法技術で配送先上空に向かい、スタッフが手作りした簡易パラシュートを付けたエアクッション入りの紙箱を、十数メートルの高さまで降下してから目標地点の半径10メートル以内の範囲に落下させる。基地局に戻ってきた機体は、空中に横に張ったワイヤーに機体下部のフックが引っ掛かり、吊り下がって止まる。

体制を拡充し、2020年3月には2,000施設へ

オメナコ基地局の配送先は、民航局に申請している飛行ルートが承認され次第、順次500カ所まで拡大させる。2019年11月末時点で既に2番目の基地局も稼働しており、3番目の基地局は12月中にテスト運航を開始し、2020年1月には商業運航を開始する。4番目の基地局も2020年3月までに立ち上げ、国内4基地局で、全国2,000カ所の医療施設に配送できる体制を整える。

(西澤成世)

(ガーナ)

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