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USMCA修正議定書が公開、米上院採決は越年の可能性も

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2019年12月12日

米国通商代表部(USTR)は12月11日、前日に署名された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の修正議定書のテキストを公開PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。議会民主党が成果としてアピールする労働や医薬品特許に関わる修正のほか、鉄鋼・アルミニウムの原産地規則の厳格化も規定される。共和党の議会上層部は、USMCA実施法案の採決はトランプ大統領に対する弾劾裁判が行われる場合にはその終了後になると発言しており、米議会での批准は越年の可能性が出ている。

自動車生産にかかる鉄鋼・アルミの原産地規則が明らかに

USMCAの修正議定書は、2018年11月30日に署名された協定本体外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに変更を加える形式となっている。下院歳入委員会の発表どおり(2019年12月11日記事参照)、主に労働や環境、医薬品データ保護に関わる修正が中心だが、メキシコ外務省が発表した鉄鋼およびアルミニウムの原産地規則の厳格化要件(2019年12月11日記事参照)も含まれる。

原産地規則に関しては、協定発効7年目以降、完成車メーカーが調達する鉄鋼の70%以上について、域内での鋳造が義務付けられる。鋳造よりさかのぼって原材料(鉄くずや鉄鉱石、銑鉄など)を域内で調達する必要はなく、また、精錬を伴う冶金(やきん)加工は対象外となる。アルミニウムについては、協定発効10年目以降に、締約国全ての利害に沿うような適切な要件を検討するための再協議を規定している。

労働、知財、環境では民主党に譲歩

労働に関しては、米国側がメキシコ国内の工場に米国査察官が視察できるよう求めていたが、修正議定書では強制的な査察は規定されなかった。労働ルール違反の疑いがある場合、専門家から成る委員会が査察を求めても、被提訴国は拒否できる仕組みになっている。メキシコのリカルド・モンレアル上院院内総務は、修正議定書の署名式で、「査察官を置く代わりに、紛争解決制度が強化された。それ以外のオプションについて、上院は率直に言って受け入れられない」と述べた。なお、委員会が違反を認めた場合、提訴国は違反先の工場で製造される製品に対して、特恵関税を停止することができる。

知的財産に関しては、米議会民主党も強調しているように、製薬会社がジェネリック薬の開発を防ぐことができる条項を削除した。また、新規の生物製剤(バイオ医薬品)に関するデータ保護期間は元の協定では最低10年間とされていたが、修正議定書では生物製剤の条項そのものを削除した。これも、民主党が薬価の高騰を招くと批判していた条項で、政権側が妥協したかたちとなる。これに対しては、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が12月10日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで厳しく批判している。

環境に関しては、協定の冒頭に、環境関連の多国間枠組み(MEA)との整合性を維持するための条項を新たに挿入した。具体的には、1973年のワシントン条約(注)など7つのMEAについて、USMCAは締約国がそれらMEAを順守することを排除しないとしている。それに伴い、環境を扱う第24章にも新たな条項を挿入し、協定加盟国はこれら7つのMEAを順守すべきとしている。

米国議会での批准見通しについて、下院で多数派の民主党は年内会期中の採決を見込む。一方の共和党は、上院での法案採決の判断を担うミッチ・マコーネル上院院内総務(共和党、ケンタッキー州)が12月10日、「来週末(2019年の会期末とされる12月20日)までにUSMCA実施法案を上院で扱うつもりはない。(弾劾)裁判が上院で終了した後に行う必要がある」と、報道陣に発言している。

(注)正式名称は「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。

(藪恭兵、磯部真一)

(米国、カナダ、メキシコ)

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