移民政策を発表、不法移民・難民の管理強化、クオータ制導入

(フランス)

パリ発

2019年11月21日

フランス政府は11月6日、移民・難民・同化政策の改善に向けた20の政策措置を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。マクロン大統領の意向を受け、10月に上下両院での討議を経て政府案としてまとめた。大統領は9月25日に、フランスおよびEUにおける現行の移民政策は「人道的でも効率的でもない」とし、外国人排斥のような短絡的な考えに陥らぬよう、さまざまな視点から議論を重ねた上で、解決策を見いだすべきだとしていた。

今回の発表ではまず、移民問題を外交政策の軸と捉え、政府開発援助を2022年までにGDP比0.55%(2018年は0.43%)に引き上げ、アフリカなど移民の多い国での経済開発や移民流出抑制に割り当てる。EUレベルでは、国境管理強化に向けたシェンゲン協定の見直しの必要性を示すとともに、次期欧州委員会が提案する予定の「移民のための欧州協定」の内容をめぐる具体的な提案をフランスが12月に行うとした。

国内では、不法移民・難民を対象にした国の医療援助制度を改正することで、手厚い支援を目的にフランスと他のEU諸国で二重に難民申請を行う動きを防止する。現在は難民申請時に加入できる国民皆保険(PUMa)に3カ月の滞在期間を条件として課すほか、不法滞在する外国人を対象にした国の医療援助(AME)についても適用対象を救急医療に限定し、受給期間を現在の12カ月から6カ月に短縮する。

不法移民・難民の管理強化については、難民審査を担当するフランス難民・無国籍者保護局(OFPRA)の職員を2020年に200人増員し、審査期間を6カ月に短縮する。また、難民申請が却下された外国人に対しては国外退去命令を迅速に出し、不法移民としての滞留を防ぐ。

他方、国内で人材確保が困難な産業分野ではクオータ制を導入し、能力のある外国人を積極的に受け入れる。受け入れる人材の具体的な人数や能力については、2020年から毎年実施する移民政策の方向性に関わる国会審議で決定するとした。

極右の国民連合(FN)のマリーヌ・ルペン党首はツイッターなどで「600万人の失業者がいる国(フランス)では、自国民に仕事を与えることが政府の優先課題だ」などと発言、政府の移民政策を批判した。

これに対し、フランス最大の経営者団体「フランス企業運動(MEDEF)」のジョフロワ・ルー・ドゥ・ベジユー会長は外国人材の受け入れについて、「経済移民は、ある特定の職業をわれわれが必要とするかしないかを明らかにすることであり、理にかなったテーマだ」「業界団体、労組、地方自治体などとともに目標値を設定するのはいい考えだ」と政府案を支持する姿勢を示した。

政府発表によると、2018年に就労目的で取得された滞在許可証は3万3,502件。全体の13%を占める。

(山崎あき)

(フランス)

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