第3四半期の実質GDP成長率、前期比0.3%で景気後退入りを回避

(英国)

ロンドン発

2019年11月14日

英国国民統計局(ONS)の11月11日の発表によると、2019年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比0.3%、前年同期比1.0%となった。第2四半期(4~6月)に25期ぶりに前期比ベースでマイナス成長に転じたが、今回はプラス成長となり、景気後退入りを免れた。しかし、ONSは前年同期比ベースでの1.0%という数値は2010年第1四半期(1~3月)以来の低成長だと指摘、英国経済の減速に対する警鐘を鳴らした(図参照)。

図 英国の四半期別実質GDP成長率の推移

需要項目別にみると、個人消費と政府支出の成長率はそれぞれ前期比0.4%、0.3%、前年同期比で1.2%、3.9%と引き続き成長に寄与した。輸出も前期比5.2%、前年同期比0.2%とプラスに持ち直した。総固定資本形成は前期比マイナス0.2%、前年同期比はマイナス0.4%だった。

産業別にみると、建設業の成長率が前期比0.6%、前年同期比1.2%、サービス業が0.4%、1.4%で景気を牽引した。鉱工業は不振だった前期に引き続いて横ばい、前年同期比1.4%減となり、農林水産業も前期比マイナス0.2%、前年同期比マイナス1.3%だった。鉱工業、とりわけ製造業の不振の背景として、英国産業連盟(CBI)が9月24日に発表した製造業269社を対象とした産業トレンド調査では、先行きの不透明さ、世界的な製造業の不振とそれに伴う内外からの受注減、過剰在庫などが問題だと指摘されている。

表 英国の実質GDP成長率〔前年(同期)比〕

また、実質GDP成長率を7月、8月、9月と月別にみると、それぞれ前月比で0.3%、マイナス0.2%、マイナス0.1%、前年同月比で1.3%、1.1%、1.0%と月を追うごとに減速した。特に製造業の不振が顕著で、それぞれ前月比0.5%、マイナス0.7%、マイナス0.4%、前月同期比ではマイナス1.1%、同1.4%、同1.4%だった。

サジード・ジャビド財務相は第3四半期のGDP成長率が前期比プラスに転じたことについて、「英国のファンダメンタルが強い証拠だ」と歓迎するコメントを発表したが、野党からは「褒められた水準ではない」(エド・デイビ自由民主党副党首)、「保守党の経済政策に掲げる希望と期待がいかに低いものかを如実に表わしている」(労働党のジョン・マクドネル影の財務相)など冷やかなコメントが聞かれた。

(岩井晴美)

(英国)

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