国外への移民が過去13年で最高に

(スイス)

ジュネーブ発

2019年11月25日

チューリッヒ連邦工科大のKOFスイス経済学院が11月8日、2018年のスイス国外および国内への移住状況調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これによると、2018年にはスイスの人口の1.5%に当たる13万人が国外に移住した。これは首都ベルンの人口に相当する人数で、この規模の国外移住は1970年代半ば以来のこととなる。スイスへ移住した人数から、スイス国外へ移住した人数を差し引いた純移民数は、2007年から2016年までは年平均7万5,000人前後だったが、2017年は4万6,000人にまで減少、2018年には4万人未満と、ここ12年間で最少になった。

スイス国外へ移住したスイス居住者の国籍別内訳をみると53.1%はEU国籍で、フランス人、ポルトガル人、スペイン人が目立つ。11月17日付の「ラジェフィ」紙はこれを、これらの国の経済環境の回復を受けた帰国者と分析している。スイス人もスイス国外へ移住した者が約25%を占め、人数では2017年と2018年に1991年以降で最大の約3万2,000人となった。20~35歳の層(国外移住者の36%)、50歳以上の層(約30%)が特に多く、これは就職や留学などで、EU域内のヒトの自由な移動を生かしてEU域内で活躍の場を求めようとするものと、退職後の生活を海外で楽しもうとするものに分かれる。後者の場合は、タイやブラジルが人気の移住先とのことだ。

一方で、スイスへの移住者数は高水準の17万人前後で推移している。2018年にスイスに移住した人数の約58%はEU域内からで、スイスからEUへの移住者数よりも、EU域内からスイスへ移住する人数の方が多い。

KOFの報告書では、国外移住の経済的な影響についても分析が行われており、2007年から2016年にかけて、入国した移民による人口増加率は平均1.1%だったが、これが2017年は0.8%、2018年0.7%増にとどまり、スイスのGDPの押し上げ効果も弱まる、としている。しかし、この傾向が長く続くわけではなく、KOFは、10年内にベビーブーマー世代の引退に伴う代替労働力需要の増加が起こり、スイスへの移民数は増加し、スイス人の国外移住も減少すると予測されている。

(和田恭)

(スイス)

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