IAEAに原子力エネルギー開発計画を提出へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月11日

フィリピンのエネルギー省のアルフォンソ・クシ長官は、12月にも国際原子力機関(IAEA)に原子力エネルギー開発計画を提出予定と複数の地元紙が報じた(10月31日)。ドゥテルテ大統領が10月にロシアのプーチン大統領と会談した際、ロシア側から原発建設プランの提案があったことを受け、原子力エネルギー活用の可能性を追求するよう関係閣僚に指示するなど、原子力エネルギーの活用に向けた機運が高まっている。

一方で、IAEAはそうしたフィリピンを牽制する動きを見せている。IAEAのミルコ・コバチェフ氏は10月、マニラ首都圏で開かれた統合原子力基盤レビュー(INIR)イベントで、フィリピンには原子力エネルギーの安全利用や放射性廃棄物の処理に関する包括的な規制の枠組みが不足していると指摘し、原子力エネルギーの導入に向けてより多くのステークホルダーとの調整を行う必要があると説明した。

フィリピン政府は2018年の第17次国会に原子力エネルギーの規制枠組み法案を提出したが、下院の第3次公聴会、上院の第2次公聴会で承認されないまま閉会した。2019年の第18次国会でも3つの法案が下院に提出されている。

フィリピンでは、1984年にルソン島バターン州に原子力発電所が完成したが、1986年2月のマルコス政権の崩壊や、4月のチェルノブイリ原発事故発生を受けて、原発の反対運動が起こり、次のコラソン・アキノ大統領が原発の休眠を決定、現在まで一度も稼働していない。

民間の調査機関ソーシャルウェザー・ステーションズが5月に実施した調査によると、79%のフィリピン人が原子力エネルギーの導入に賛成と回答している。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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