香港の政情不安がスイスの銀行や時計産業に影響

(スイス)

ジュネーブ発

2019年11月29日

香港の政情不安に、スイスの銀行業界が懸念を深めている。香港は中国の貿易中継拠点の役割を担ってきたが、この20年、中国の富裕資産の運用拠点にもなっていた。

11月20日付「トリビュン・ド・ジュネーブ」紙によると、スイスからは、顧客担当を約1,000人抱えるUBSをはじめ、クレディ・スイス、ジュリアス・ベア、ピクテなどの銀行が香港に支店を置いているが、5カ月続いている政情不安により、現地銀行業界は資金逃避の動きがないか神経をとがらせているとのことだ。22日のリヒテンシュタイン銀行協会主催の50周年記念パーティーでも、リヒテンシュタインに本拠を置く銀行の中には香港から撤退する予定の銀行があるとの話があった。

時計業界では既に影響が出ており、スイス時計協会の発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によれば、スイス時計の世界最大の輸出先国・地域である香港への2019年10月の輸出は前年同月比で29.7%減と落ち込んだ。輸出総額が増加基調にあり、10月の中国への輸出が17.6%増、日本向けが11.3%増と、総輸出額が20億スイス・フラン(約2,180億円、1フラン=約109円)を突破する中で、主要6輸出先国・地域のうち香港のみが大幅に減少した。9月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいても、米国、中国、日本については、前年同月比でそれぞれ、14.7%増、26.0%増、31.6%増と、輸出の伸びが好調な中、香港のみ4.6%減と沈んでおり、この下降トレンドが本格化した格好だ。

(和田恭)

(スイス)

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