ジュネーブ州、ウーバーを交通サービス提供者と見なして事実上の事業停止へ

(スイス)

ジュネーブ発

2019年11月08日

スイス・ジュネーブ州政府は11月1日、ウーバー(Uber)のライド・シェアリング事業を事実上差し止めする判断を示した。同州のマウロ・ボッジア雇用担当参事(大臣)が11月1日に放送されたスイス公共放送SRG/SSFのインタビューに答え、ウーバーはジュネーブ州のタクシー・ハイヤー法(LTVTC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの交通サービス提供者に当たり、運転者を雇用し社会保障を提供する義務があると述べた。

LTVTCは2017年7月に施行され、タクシーなどの交通サービス提供者と配車サービス提供者の権利と義務を定めている。交通サービス提供者の場合、運転者に対して雇用および社会保障の提供が求められるが、ウーバーは個人事業主の運転する自動車の配車サービスを行うという立場から、これらの措置は取っていない。しかし、ポッジア参事は、運転者はウーバーに対し従属関係にあること、乗車拒否には制裁があり、乗客の選定・価格設定・走行ルートについて運転者に決定権がないことなどから、運転者を個人事業主と見なすことはできず、ウーバー事業は交通サービスの提供に当たると判断され、ウーバーは運転者を雇用し社会保障を提供する義務を負うとの見解を示した。さらに、オランダに拠点を置くウーバーがスイス国外からスイスへの労働者派遣は90日以内とするなどの外国企業の義務を果たしていないことも問題視した。ジュネーブ州はウーバーに対して、30日以内に違法状態の解消を求めることを通告したが、ウーバー側はジュネーブ行政上訴裁判所に異議申し立てを行い、認められなければジュネーブでのサービスを停止する意向と報道されている。

ウーバーの配車サービスはスイスでも人気を得ており、「スイスインフォ」(11月5日付)によると、40万人以上のユーザーがいるが、ジュネーブでの事業環境はかなり厳しい。LTVTCの規定により、バス・タクシー優先レーンを利用できず、空港での客待ち駐車も認められていない。5月には、ドライバーの待遇改善のため、他の欧州諸国と同様にスイスでも契約運転者に対する交通事故賠償責任保険を付与していた。同業者のカプテン(Kapten)は、2月にスイスで事業展開を開始してわずか7カ月後の9月、スイス国内でのサービス停止を発表した。

(和田恭)

(スイス)

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