投資先としてセルビア市場を重視するトルコ

(トルコ、セルビア)

イスタンブール発

2019年10月21日

トルコのエルドアン大統領は10月8日にセルビアを訪問し、近いうちにフェリックス・アカデミー(Felix Academy、トルコのビジネスコンサルタント)が同国に進出し、ベルテクス・テキスタイル(Berteks Tekstil)、ソイレメズ・カウチク(Soylemez Kaucuk)、テクラス・オトモティブ(Teklas Otomotiv)、ジェアンジ・テキスタイル(Jeanci Tekstil)が新規および第2工場を立ち上げる、と述べた(注)。

トルコ企業がセルビア南部に雇用を創出

トルコ企業のバルカン進出は、2010年代に入り、主に安い人件費を求めて始まった。その関心は、EU加盟を果たしたブルガリアとルーマニアから、西バルカンへと移っていった。中でも、比較的市場規模の大きいセルビアは、労働集約型の繊維・衣料品産業の生産拠点として注目されるようになった。

トルコ企業のセルビア進出は、経済的に後進地域である南部に集中しており、同地域の雇用創出に貢献することが期待されている。2016年にアステル・テキスタイル(Aster Tekstil)がニシュに生産で進出し、2018年末にはタイパ・テキスタイル傘下のユーロタイ・テキスタイル(Eurotay)がクラリエボに大型投資を行い、生産を開始した。

また、多くのトルコのアパレルブランドも、バルカン諸国に販売で進出している。こうした企業の中には、特にセルビアは人口規模が大きいこと、また海外の主要ブランドの進出が遅れていることが魅力的で、この2つを同国への進出を優先する重要な要因に挙げるところもある。

また、自動車部門においても、イタリアのフィアットやドイツの自動車部品産業の進出に対応して、トルコから2016年に前出のテクラスやソイレメズが自動車用ゴム部品生産で進出している。

トルコは貿易面においても、2010年に締結した自由貿易協定(FTA)に、2018年には農産品を対象に加えるなど、関係を強化させている(2019年1月25日記事参照)。さらに大統領は、イスラム教徒の多く住む南部のノビ・パザルへの総領事館の設置計画を明らかにし、バルカン半島のイスラム教徒との関係強化も目指している。

(注)ベオグラード~サラエボ間のハイウエー建設起工式典でのスピーチ(2019年10月17日記事参照)。

(中島敏博)

(トルコ、セルビア)

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