欧州の多国籍企業経営者、EU競争政策について提言

(EU)

ブリュッセル発

2019年10月17日

欧州の主要多国籍企業の経営者55人からなる欧州実業家円卓会議(European Round Table of Industrialists、以下ERT)は10月7日、グローバルな環境に合ったEUの競争政策に関する提言をまとめた文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。先端技術部門での成長が著しく台頭する中国や、内向きの姿勢を強める米国も念頭に置いたものだ。

企業合併への政治的関与の拡大には否定的

ERTは、欧州企業が今日の変化の激しいグローバル経済において、競合を制してスケールの大きい成功を収める上で、競争法を執行するためのよりダイナミックなアプローチを採用することに加え、グローバルな競争力を守るために総合的な視点を持つことの重要性を強調。昨今のデジタル化したグローバル市場に適したEUの競争政策に向けて、次の4項目を提言した。

  1. 競争法執行の昨今のデジタル化経済の需要への適合:特に、データやイノベーションの役割など価格以外の要因や、企業間関係による潜在的な消費者の利益を考慮したダイナミックかつ実利的なアプローチ。
  2. 無駄のない企業合併審査:広範かつ進歩的な実質的審査や、情報要求の負担軽減を含む企業合併審査手続きの簡易化と迅速化、効果的な司法審査の実施など。
  3. 競争的協調の法的位置付けの明確化:競争促進的な企業活動に優しい環境の醸成、欧州委員会と加盟国競争当局間の調和のとれたアプローチ、企業へのより良い手引き。
  4. グローバルな競争力確保に向けた全体的な視点:欧州委は、欧州で操業する国有企業や国家の支援を受ける外国企業の市場慣行や市場支配力をより包括的に把握し、主要戦略分野などでの研究を可能とする、より柔軟な国家援助ルールを導入すべきだ。

なお、2019年2月にドイツおよびフランス政府が連名で、EU産業のグローバル競争力強化に向けた声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発出し、加盟国が欧州委の企業合併の決定を覆す権利を提案していたが、これに対して、ERTは「企業合併審査への政治的関与の拡大や、競争総局の決定を付託するための別の機関が必要だとは考えない」と否定的な見方を示した。

(村岡有)

(EU)

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