低濃縮ウラン備蓄バンク始動、原発燃料の安定供給に貢献

(カザフスタン)

タシケント発

2019年10月24日

国際原子力機関(IAEA)とカザフスタン政府は、共同で建設を進めてきた低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンクが10月17日に最初の核燃料が納入され運用可能になったと発表した。

LEU備蓄バンクは一般的な軽水炉の燃料製造に適したLEUを備蓄し、IAEA加盟国が政治的な理由や不測の事態で核燃料の供給が止まった場合の供給源確保を目的とした核燃料備蓄施設。2010年にIAEAが設立を決定し、翌年にカザフスタン政府からホスト国となる提案があった。2015年に両者が合意を交わし、2017年に東カザフスタン州オスクメン(旧ウスチノカメノゴルスク)市にあるウルバ冶金(やきん)工場(注1)が貯蔵施設の建設を完了していた。

今回納入されたLEUはフランスのオラノサイクル製。2019年末にはカザフスタンのカズアトムプロムからもLEUが納入される予定(最大備蓄容量は90トン)。

LEU備蓄バンクはIAEAの管理下に置かれ、運営経費は任意(注2)の拠出金1億5,000万ドル(20年分の運営費に相当)で賄われる。

IAEAのコーネル・フェルタ事務局長は「このプロジェクトはIAEAが創設されて以来最も野心的で挑戦的なものだ。核燃料の輸送経路の確保に向けた関係国や輸送会社との調整、安全基準を満たした備蓄施設の建設などいろいろな面で難航したが、今回の輸送を通して貴重な経験と自信を得た」と語り、関係各国に謝意を表明した。

LEU備蓄バンク設立にイニシアチブをとったカザフスタン前大統領(初代大統領)のヌルスルタン・ナザルバエフ氏は、LEU備蓄バンクによってウラン濃縮能力のない国々が安定した核燃料提供を受けられるようにすることで、核の平和利用を保障すると同時に、核不拡散の強化に貢献すると語っている。

(注1)ウルバ冶金工場は1949年に設立されたカザフスタンで最も古い原子力産業会社で、六フッ化ウランの研究を含め、核燃料の生産に豊富な経験を持つ。従業員6,000人。

(注2)米国民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」と米国、EU、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、ノルウェー、カザフスタンが拠出している。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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