10月21日のカナダ総選挙直前まで激戦を続ける自由党と保守党

(カナダ)

トロント発

2019年10月18日

カナダ連邦下院議会選挙は10月21日に投開票日を迎えるが、世論調査による政党支持率では、ジャスティン・トルドー首相率いる与党・自由党と、アンドリュー・シアー党首率いる野党第1党・保守党が拮抗(きっこう)した状況が続いており(添付資料の図1、図2参照)、両党とも過半数を獲得できないとの見方が強まっている。

CBCニュースの調査(10月17日)では「自由党が過半数の議席を確保する可能性」が11%、「自由党が最多の議席を確保するが、過半数の獲得には至らない可能性」が49%、「保守党が最多の議席を確保するが、過半数を獲得には至らない可能性」が37%、「保守党が過半数の議席を確保する可能性」が2%となっている。CBCニュース(10月17日)、ローリエ世論公共政策研究所(LISPOP)(10月16日)による各党の獲得議席の予測は添付資料の表1のとおり。

このような情勢の中、新民主党のジョグミート・シン党首は10月13日にブリティッシュ・コロンビア州で行った演説で、自由党など他党との連立政権への参加を含め、保守党政権の樹立を防ぐために「必要なことは何でも行う」と述べた。これに対し、トルドー首相は、連立政権の可能性に関して、記者らからの質問に直接回答することはなく、過半数の議席の獲得を目指すとの発言に終始した。

今回の選挙戦の主な争点の1つである気候変動と環境問題に関し、トルドー政権は2018年、温暖化ガスの排出規制を打ち出していない4つの州(オンタリオ、サスカチュワン、マニトバ、ニュー・ブランズウィック)に対し、2019年4月から1トン当たり20カナダ・ドル(約1,660円、Cドル、1Cドル=約83円)の炭素税を課した。炭素税は2022年まで年10Cドルずつ引き上げ、最終的に50Cドルにすることとしている。これに対し、新民主党、緑の党、ブロック・ケべコワは炭素税支持の方針を示しているが、保守党は炭素税の廃止を公約に掲げている。

通商分野では、最大の貿易相手国である米国が保護貿易的な政策を打ち出し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や鉄鋼、アルミニウム製品への追加関税賦課などの課題が発生した。トルドー首相は選挙戦で、そうした課題に対して粘り強く交渉を続け、大きな譲歩もせずに合意、解決に至ったことや、そのような環境下でも積極的に在カナダ企業の設備投資への補助なども行うことで、国内経済も成長を継続させた実績を強調している。そして、そのために財政赤字が拡大しているとし、2020年度も274億Cドルの赤字予算を組むことを公約に掲げている。主要政党の主な公約は添付資料の表2のとおり。

(酒井拓司)

(カナダ)

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