トーマス・クック経営破綻、ギリシャにも影響

(ギリシャ)

ミラノ発

2019年10月28日

英国の旅行大手トーマス・クック・グループが9月23日に行った破産申請は、ギリシャにも余波を及ぼしている。

ハリス・テオハリス観光相によると、破産申請による混乱のためにギリシャで足止めされた観光客は約5万人に上り、そのうちの2万5,000人は英国人旅行者だったという。また、英国人旅行者の帰国にかかる経費負担は、全て英国民間航空局(CAA)が措置を取ることを9月23日の民間放送局OPENチャンネルとのインタビューで明らかにした。

ギリシャホテル商工会議所は、トーマス・クックの破綻がもたらすギリシャ観光業界への影響について、非営利の観光調査研究所(ITEP)に調査を依頼、10月1日に結果を発表した。それによると、国内の宿泊施設への2019年推定損害額は3億1,500万ユーロに上ることが分かった。また、2019年は国内9,917の宿泊施設のうち、12%に当たる1,193件の宿泊施設がトーマス・クックと提携していた。

同商工会議所のアレクサンドロス・バシリコス代表は、同社の破綻によって2020年に25億ユーロの損失が実体経済に発生するリスクがあるため、ギリシャ政府、観光省、地方自治体、旅行業界に対し、今後のプロモーションを強化していくよう呼び掛けた。観光シーズンの延長と高所得層の観光客の誘致はギリシャの観光経済にとって最優先で取り組むべきとも述べている。

なお、ギリシャ政府は、2019年1月1日から9月30日までの期間にトーマス・クックとのビジネスによる収益が全体の25%以上を占める企業に対して、VATの支払期限を2020年3月30日まで延長する特別措置を決定、9月30日に公式発表している。

そのほか、ギリシャ労働省傘下の労働管理機関OAEDは、トーマス・クック破綻の影響を受けて失業した者に対し、失業手当を受給するために必要な労働日数を100日から80日に削減する特別措置の実施を公表している。

また、ギリシャ財務省は10月9日、破綻による損害を受けたホテル企業に対し、宿泊税の支払い免除を提案する法改正案をギリシャ議会に提出したことを同省サイトで発表している。

(井上友里、山崎杏奈)

(ギリシャ)

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