ナイジェリアの国境封鎖、ベナン経済に影響

(ベナン、ナイジェリア)

アビジャン発

2019年10月10日

ベナンでは、東に隣接する巨大市場ナイジェリアとの国境が封鎖された影響で、経済の損失が深刻化している(「AFP通信」9月20日)。ナイジェリア政府は8月20日、ベナンとの主要国境であるセメ・クラケ間の国境を含む、700キロにわたる12カ所の国境を一時的に封鎖した。ナイジェリア当局は、ベナンから流入する不法商品が国内経済に大きな損失を与えていることを理由に、ベナン政府が有効な密輸取り締まり策を講じるまで、国境封鎖を継続するとしている。

ベナンからは、セメ・クラケ間の国境を経由し、大量のコメや冷凍鶏肉、中古車などがナイジェリアに流入している。ナイジェリア政府は、国内産業保護や輸入代替、密輸防止を理由に、いずれの商品も陸路での輸入を禁止しているが、国内の生産能力では需要を賄いきれない状況のため、密輸が後を絶たないとみられる。同政府はベナン政府に対し、これまで再三にわたり対策を講じるよう要求していた。

ベナンは、巨大市場のナイジェリアとの交易ルートを絶たれたことで、貿易取引だけでなく、農業生産やサプライチェーン、市民生活、国家財政にまで影響が及んでいる。国内有数の農産地であるグランポポ地方を訪問したベナンのガストン・ドスウィ農業相は、農産品の出荷が滞っている状況の下、封鎖がこれ以上長引けば壊滅的な状況になると訴えた。アジェオダ・アムス農業会議所会頭は、AFPのインタビューで「経済的締め付けにより、農家は借金が膨らむばかりだ」と失意を表した。

世界銀行によると、ベナンは経済活動の主体が再輸出で、ナイジェリアとの越境取引がGDPの2割を占めている。ナイジェリアからの輸出も、このルートを利用して活発に行われており、両国の経済は水面下で強固に結び付いている。セメ・クラケ間の国境を通過するナイジェリアからの主な輸出産品は、セメントやゴム製品、食品・飲料などが目立つ。しかし、統計には表れないものの、価格統制によって安価なガソリンが、税関の目をかいくぐって、ベナンに流出しているとの報道もある。

(渡辺久美子)

(ベナン、ナイジェリア)

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