大統領選挙で野党フェルナンデス元首相が勝利

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年10月28日

アルゼンチン大統領選挙が10月27日に行われ、中道左派「すべての戦線」のアルベルト・フェルナンデス元首相が、再選を目指した中道右派「変化とともに」のマウリシオ・マクリ大統領に約7ポイント差を付けて勝利を確実にした。

本選挙の第1回投票の開票率94.42%の時点で、フェルナンデス元首相の得票率が47.87%、マクリ大統領が40.63%、ロベルト・ラバーニャ元経済相が6.17%と続いた(表参照)。この結果、決選投票を経ることなく当選となる見込みだ。

勝利したフェルナンデス氏は1959年生まれ。現在は弁護士で、大学でも教壇に立っている。これまで、国家保険監督庁長官(1989~1995年)や、ブエノスアイレス自治市下院議員(2000~2003年)、首相(2003~2008年)などを務めてきた。副大統領候補のクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル元大統領とは、2007~2008年にかけて大統領と首相の立場で政権を担ってきた。

今回の大統領選挙は、マクリ大統領の約4年間の実績に対する審判でもあった。任期中、財政規律の立て直しには一定の成果を見せたものの、高金利政策による景気の低迷、政権発足当初から課題となっていたインフレ率や貧困率の改善が見られなかった。その一方で、事前の各種調査ではフェルナンデス元首相が2桁以上のポイントでリードしていたが、最終的には約7ポイント差まで縮まるなど、マクリ大統領が終盤に浮動票の一定の支持を得た結果ともなった。

大統領就任式は12月10日に予定されており、10月28日から政権移行期間に入る。マクリ大統領は、政権交代する場合でも次期政権に協力する姿勢を見せている。しかし、市場では引き続き新政権誕生による警戒感は残っており、10月28日以降の為替などの動きによっては、政府によるさらなる資本規制の強化などが行われる可能性もささやかれている。

表 アルゼンチン大統領選挙の結果(開票率94.42%)

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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