サンクトペテルブルクのITイベント、企業と人材の接触の場に

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2019年09月04日

ロシアのサンクトペテルブルク市内で8月24、25日、ITイベント「テックトレイン」が開催された。前年に続いて2回目となったイベントの特徴は、IT技術者の祭典と位置付けられる一方で、企業とIT人材の接触の場となっていることだ。

写真 会場の様子(ジェトロ撮影)

会場の様子(ジェトロ撮影)

主催者はIT技術者向けのイベントを多数開催しているJUG RU GROUP。今回のイベントはセミナーやワークショップのほか、66社・団体によるブース出展から成り、主な企業は、デル・テクノロジーズや大手電子決済サービスQIWIといったテクノロジー関連企業、ロシア最大手行ズベルバンクなどで、来場対象はエンジニアやプログラマーといったIT技術者。週末の開催ということもあり、ラフな装いの個人参加とみられる来場者が目立った。会場の一角には、ゲーム機の進化と銘打って往年のゲーム機の試遊機が複数置かれたり、著名な米国人プログラマーの講演とサイン会が開催されたりするなど、来場者を引き付ける工夫が随所に凝らされていた。

写真 デル・テクノロジーズのブース(ジェトロ撮影)

デル・テクノロジーズのブース(ジェトロ撮影)

このイベントが期待されている役割は、優秀なIT人材を見つけたい企業と、良い条件の仕事ややりがいのある仕事を求めるIT人材の接触の場ということだ。来場者対応を行う出展企業の担当者の多くは人事担当であり、企業ブースでは自社製品のPRだけではなく、開発環境など会社としての魅力をアピールする仕掛けが目立った。会場内限定の求人募集を告知するコーナーもあった。

事実、出展企業の担当者の多くが出展の最大の目的は「優秀なIT人材との出会いだ」と言い切る。ある大手IT企業の担当者は「モスクワに本社があるが、サンクトペテルブルクの人材の発掘を目的に参加した」と述べ、多くのIT人材と一度にコンタクトできることがイベントの魅力だと語った。一方で、企業と参加者が面談するようなスペースはないため、直接的な採用活動を行うわけではなく、あくまで両者が知り合うきっかけとして機能しているようだ。また、来場者のモチベーションも高く、顔を上げて聞き入ったりメモを取ったりする来場者が多かった。週末に入場料を払ってでも自身にとって魅力的なキャリアを探したり、新しいトレンドを吸収したりする熱心なIT人材が多いことがうかがえた。

写真 熱心に聞き入る参加者たち(ジェトロ撮影)

熱心に聞き入る参加者たち(ジェトロ撮影)

ジェトロが会場で主催者にインタビューしたところ、来場者は2日間で3,000人を見込むと語った。主催者自身もイベントはIT人材との接触という観点で出展企業・団体から好評を博しているとし、「来年はサンクトペテルブルクに加えてモスクワでの開催も検討中している」と述べた。

シリコンバレーやイスラエルではロシア人プログラマーが活躍しており、ロシアのIT人材の質に対しては世界で高く評価されている。ロシアのIT人材との接触を検討している日本企業にとっては、こうしたイベントの機会をとらえることも一案だろう。

(一瀬友太)

(ロシア)

ビジネス短信 cd6619f0d1a50a1f