欧州産業界から新欧州委員会への期待と要望相次ぐ

(EU)

ブリュッセル発

2019年09月12日

ウルズラ・フォン・デア・ライエン次期欧州委員長が9月10日に次期欧州委員会の人事案(2019年9月11日記事参照)を公表したことを受けて、EUの主要な業界団体などは相次いで支持を表明するとともに、産業政策に関する要望や運営上の懸念を示した。

競争力強化の政策を期待

欧州製薬団体連合会(EFPIA)は9月11日、保健衛生担当の欧州委員にステラ・キリヤキデス元欧州評議会・議員会議議長が内定したことを受け、「新たな治療・技術へのアクセスとその利用、医療革新、持続可能で競争力ある医療システムを確保するため、協働することを心待ちにしている」と歓迎する声明を出した。具体的には、「手ごろな価格の医薬品の確実な供給を可能にする措置の検討」「規制環境の進化、健康医療データの活用促進、欧州の知的財産の枠組みを保護し持続可能な製造を支援する産業戦略」「がん撲滅に向け、予防から緩和ケアまでの包括的アプローチの導入や、ホライゾン・ヨーロッパプログラムにおける研究目標の調整」を望むとした。さらに、細菌や微生物などが薬剤への耐性を持ち、効果的な予防・治療を脅かす薬剤耐性との闘いを欧州が牽引することの重要性を強調した。

デジタルヨーロッパは9月10日の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、マルグレーテ・ベスタエアー欧州委員(競争政策担当)の上級副委員長(欧州デジタル化対応総括;競争政策担当委員と兼務)への指名について、デジタル分野や先端技術活用におけるイノベーションと技術的規制を形成する上で世界をリードするという欧州の意思を示すものだとして、同氏の国際的なリーダーシップをフルサポートする用意があると述べた。デジタルヨーロッパは、この目的達成にはデジタル単一市場や開かれた通商基盤の構築が必要と指摘、関係する政府や専門機関、企業や労働組合、NGOなど全ての加盟国の利害関係者の連携を通じた機敏で包括的な政策立案が重要と強調。欧州らしい倫理的な人工知能(AI)活用を目指すハイレベル・グループなどを好例として継続運営することも求めた。

欧州労働組合連盟(ETUC)も9月10日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、男女比のバランスや、労働者の立場に理解のある適材適所の人材登用を評価。同時に、欧州委員会の新体制が、持続可能な成長と質の高い雇用創出を実現するための野心的かつ社会基準・環境基準を満たす労働政策を打ち出すか、その在り方を注視するとしている。

5月の欧州議会選挙で4位に躍進した環境政党の欧州緑の党・欧州自由連盟(GREENS/EFA)グループは9月10日、今回の人事案を「必ずしも納得できない」と否定的な見解外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示した。スカ・ケラー共同代表は、上級副委員長(欧州グリーン・ディール政策総括;気候変動対策担当委員を兼務)の創設について、「極めて重い任務であり、1人で担うには優先事項が多い」として運用面に懸念を示した。一方で、欧州委員会史上初めての女性委員長の誕生、適切な男女比による委員指名、ベスタエアー委員の上級副委員長としての起用は支持する意向を明らかにした。

(前田篤穂)

(EU)

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