ゴールドマン・サックス、ロシア人起業のデータ保護大手アクロニスに1億4,700万ドルの投資ラウンド実施

(ロシア、シンガポール、スイス、米国)

欧州ロシアCIS課

2019年09月27日

米国投資銀行大手ゴールドマン・サックスは、高名なロシア人起業家セルゲイ・ベロウソフ氏が2003年に起業したデータ保護大手アクロニス(シンガポール籍)に対して、1億4,700万ドルの投資ラウンドを実施する。アクロニスが9月18日に発表した。

投資ラウンドとは、ベンチャーキャピタルなどが企業の成長段階に応じて段階的に投資すること。アクロニスによると、ゴールドマン・サックスから10億ドル超をアクロニクスが資金調達し、この資金を用いてシンガポールやブルガリア、米国アリゾナ州におけるエンジニアリングチームの増員、データセンターの増設、買収を通じたビジネス拡大などを行うとしている。

シンガポールで創業したアクロニスは、バックアップ、ランサムウエア対策、災害被害復旧、ストレージ、企業向けファイル同期・共有ソリューションなどでのデータ保護ソフトウエア・サービスプロバイダー。同社の製品は150カ国において、30以上の言語で500万人以上の個人ユーザーと50万以上の法人に活用されている。2008年にスイスに本社を構え、世界18カ国に約1,400人の従業員が在籍。研究開発拠点はシンガポールとスイス、ブルガリア、米国、ロシアの5カ所にあり、ロシアの研究開発拠点は、モスクワ北部のIT分野に特化したテクノパーク「フィズテックパーク」に立地している。日本法人は2009年に設立しており、六本木ヒルズにオフィスを構えている。

創業者兼最高経営責任者(CEO)のベロウソフ氏は1971年にレニングラード(現サンクトペテルブルク)に生まれ、モスクワ物理工科大を卒業。アクロニスのほか、OS仮想化ソフト分野で有名なパラレルスなど20社以上を起業している。このほか、ロシアのベンチャーキャピタル大手ルナ・キャピタルや、フィズテックベンチャーズなどでパートナーを務めるなど、技術系スタートアップ企業を支援するベンチャーキャピタル事業にも従事。1995年にロシアを離れ、現在はシンガポールに居住している。

写真 アクロニスのロシア研究開発拠点が入居するモスクワの「フィズテックパーク」(ジェトロ撮影)

アクロニスのロシア研究開発拠点が入居するモスクワの「フィズテックパーク」(ジェトロ撮影)

今回の投資ラウンド実施について、ゴールドマン・サックスの1部門で、成長段階にある技術系ベンチャー企業への投資に特化した「ゴールドマン・サックス・グロース・エクイティ」バイスプレジデントのホルガー・スタウト氏は「従来のデータ保護とサイバーセキュリティーの融合によるアクロニスの5つのビジョン(データの安全性、アクセシビリティー、プライバシー、真正性、サイバーセキュリティー)の確保の実現に寄与するもの」とし、ベロウソフ氏は「企業買収や追加リソースの買収を通じて製品開発を迅速に推進し、ビジネスの成長加速化に貢献する」と述べた。

(齋藤寛)

(ロシア、シンガポール、スイス、米国)

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