重慶とシンガポール間の連携強化、専用データ通信回線を開設

(シンガポール、中国)

シンガポール発

2019年09月20日

シンガポール政府は9月11日、同国と中国重慶市を結ぶ専用データ通信回線「中国・シンガポール(重慶)国際データ・チャンネル(IDC)」の開設を発表した。中国政府が、中国国内の都市と国外の都市とを直接結ぶ専用のデータ通信回線を設けるのは、シンガポールが初めて。

写真 IDCの開設式典で握手を交わす陳・重慶市共産党委書記(左から3人目)とチャン貿易産業相(ジェトロ撮影)

IDCの開設式典で握手を交わす陳・重慶市共産党委書記(左から3人目)とチャン貿易産業相(ジェトロ撮影)

IDCの通信速度は260Gbps(ギガビット毎秒)。専用のデータ通信回線の設置により、既存の通信回線よりも速く、データ送信の待ち時間が少ないなどのメリットがある。シンガポール情報通信開発庁(IMDA)の発表によると、直近ではIDCを利用できるのは、重慶市内の7カ所の工業団地に入居する企業となる(注)。同庁は「長期的には重慶をハブとして(周辺の)中国西部地域も、IDCの通信回線を使ってシンガポールまでつなげる」方針だ。IDCの利用に当たっては、シンガポールの通信会社であるシンガポール・テレコム(シングテル)とスターハブが同日、それぞれ中国の通信3社とIDCの運用で覚書(MOU)に署名。また、中国のテンセントを含む中国企業9社がIDCの利用でMOUを締結した。

深まる重慶とシンガポールの2都市間協力

今回のIDC開設式典は、同日開催された「シンガポール・中国重慶経済貿易協力フォーラム」において、重慶市共産党委員会の陳敏爾書記と、シンガポールのチャン・チュンシン貿易産業相の立ち合いの下で、行われた。両国政府は2015年11月、蘇州市、天津市に次ぐ3つ目の2国間プロジェクトとして、重慶市を選定した。同プロジェクト「中国・シンガポール(重慶)コネクティビティー・イニシアチブ(CCI)」では、今回のIDC設置を含む情報通信技術(ICT)をはじめ、金融サービス、輸送・物流などの4分野を優先分野として、重慶市とシンガポール間のコネクティビティー、サービス連携の強化を焦点としている(2019年4月8日付地域・分析レポート参照)。

CCIに基づく目玉プロジェクトとして、2017年12月から、重慶市から広西チワン族自治区の欽州港までを鉄道輸送し、東南アジアまでを海上輸送する陸海輸送路「国際陸海貿易新通道(ILSTC)」の本格運用が始まっている。陳書記は同フォーラムでの演説で、「CCIが重慶市とシンガポール間の協力を深める懸け橋となっている」と述べた。

(注)7カ所の重慶市の工業団地は、(1)両江数字経済産業園、(2)仙桃国際大数据谷、(3)中国智谷(重慶)科技園、(4)西永微電子産業園、(5)永川高新技朮産業開発区欽県産業園、(6)モバイル・インターネット・インダストリアルパーク、(7)ブロックチェーン・イノベーション・インダストリアル・ベース。

(本田智津絵)

(シンガポール、中国)

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