ジャンム・カシミール州の自治権を剥奪、2つの連邦直轄地に分割

(インド)

ニューデリー発

2019年08月09日

インド政府は8月6日、ジャンム・カシミール(JK)州に特別な自治権を与えていたインド国憲法第370条を廃止して同州の自治権を剥奪し、JK州をJKと州東部ラダックの2つの連邦直轄地に分割する改正案を成立させた。ラダックは議会を持たない連邦直轄地となる。憲法第370条の規定は、JK州の防衛、金融、通信、外交以外の事項に関し、同州議会の承認なしに憲法に基づく法律の発行を不可としていた。これにより、同州の住民は他の州とは異なる特別な市民権や財産所有権が規定され、JK州外のインド国民は同州の土地を購入できないなどの規制があった。

この特別な自治権の剥奪により、今後は州外から同地への投資や土地などの資産購入が可能となる。今回の改正について、アミット・シャー内相は「JKの経済発展につながる民間投資のドアが開かれることになり、雇用創出や社会・経済インフラの向上に寄与するだろう」と見通しを述べた。特に、土地購入権の開放は外国企業を含めた投資流入に大きな影響を与えるとみられる。政府は同地の開発以外に、テロリズムの撲滅を目指している。政府プレスリリース(8月5日)によると、内相は、憲法370条の存在がJKの民主化を阻害し、テロの発生要因となる汚職や貧困を呼び込んでいたとしている。

この決定に対し、特別自治権により支持基盤を保っていたJKの地域政党や、国政で最大野党の国民会議派(コングレス)は反対を表明している。また、国境問題を抱えるパキスタンも反発の姿勢を見せており、中国もパキスタンの意向を支持している。

(古屋礼子)

(インド)

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