ノー・ディール対策予算を増額

(英国)

ロンドン発

2019年08月05日

英国のサジード・ジャビド財務相は7月31日、EUからの合意なき離脱(ノー・ディール)対策の2019年度予算を21億ポンド(約2,709億円、1ポンド=約129円)追加拠出することを発表した。このうち11億ポンドは重要な分野に直ちに拠出される。

この11億ポンドのうち、3億4,400万ポンドは国境管理や税関向けに充てられる。国境管理担当職員を500人追加配備し、合計で1,000人超とするほか、パスポート発行業務の処理能力の拡大、輸出入の代行業者が新規に雇用した人材への訓練やITシステムへの投資に対する政府支援の倍増、港湾周辺の輸送インフラ改善やノー・ディールの際の輸送道路の混雑解消に向けた資金となる。

そのほか、4億3,400万ポンドを輸送経路の確保や在庫積み増しも含む重要な医薬品や医療製品の供給継続に割り振る。また、企業の対応支援に1億800万ポンド、政府による情報発信に1億3,800万ポンドを拠出する。政府の情報発信については、英国のEU離脱(ブレグジット)の準備を呼び掛けるためのさらなる新たなキャンペーン、外国に居住する英国人への各国領事館による情報発信、北アイルランドなど地方への支援が挙げられている。

21億ポンドの残りの10億ポンドについては、各省庁ならびに自治政府のブレグジットに対する運用準備資金となり、追加資金が必要となった場合に財務相に要請できるものとしている。ブレグジットの準備に係る予算はこれまで2016年度から42億ポンドが拠出されており、今回の追加拠出で合計63億ポンドまで増額することとなる。

BBCによると、8月2日にはジャビド財務相は税関を管轄する歳入関税庁(HMRC)宛てに書簡を送り、ノー・ディールへの準備を最優先事項にするとともに、準備の進捗について週単位で結果重視のアップデートを行うことを要請した。他方、HMRCの労働組合からは、HMRCの準備不足を非難するとも受け止められる要請を行う以前に、閣僚が自身の戦略不足に目を向けるべきとする声が出ている。HMRCの広報担当によると、国民投票以降、既にブレグジットの準備に5,000人の専任職員を採用したほか、ブレグジット後の税関・国境手続きに向けた準備もあるとしている。

(木下裕之)

(英国)

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