大統領、鉱山開発権の新規供与停止を表明

(メキシコ)

メキシコ発

2019年08月22日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は8月11日、サカテカス州コンセプシオン・デ・オロで開催された集会で、これまでの供与済み鉱山開発コンセッションは維持するが、今後はコンセッションを供与しないと表明した。

国内外の企業に鉱山開発コンセッションを供与する政策は1983年に始まり、サリーナス・デ・ゴルタリ大統領の時代(1988年12月~1994年11月)に活発化した。コンセッションが供与された面積は8,000万ヘクタールに及び、これはメキシコ全土の約40%に相当する、とロペス・オブラドール大統領は説明した。既に多くの国土を鉱山開発コンセッションの対象としており、これ以上の供与は必要ないというのが同大統領の主張だ。また、コンセッションを供与された企業の中には、開発よりも投機目的で土地を活用しているところがあると批判した。

鉱山開発企業に3つの要請

大統領は今回、鉱山開発企業に対して3つのことを要請すると表明した。1つ目は環境保全で、例えば、カナダ企業であれば、メキシコでもカナダの環境保全基準を満たすよう十分な措置を講じることを要請するとのことだ。2つ目は鉱山労働者の賃金の引き上げだ。メキシコの鉱山労働者の賃金はカナダや米国と比べ約10分の1だとして、その2カ国の賃金水準への引き上げを求めると発言した。3つ目は、鉱山が所在する地域コミュニティーへの利益還元だ。

鉱山法改正に向けた与党提案は事実上消失

与党・国民再建運動(MORENA)は、大統領就任前の2018年11月に、鉱山開発コンセッションに関する規則を強化するとともに、その要件を満たすことができない開発案件についてはコンセッションを無効にできるよう鉱山法を改正することを提案していた。この鉱山法改正提案はその後、進展することはなく、今回の大統領の発言により、事実上消滅したことになる。鉱山開発を進めている企業にとっては朗報と捉えられるが、一方で、新規のコンセッション供与が停止されたことが新規の探鉱の足かせになることが懸念される。

鉱業部門の実質成長率は2013年から2018年まで6年連続でマイナスになっている。石油・天然ガス分野が2005年以降14年連続でマイナス成長になっているのが主たる原因だが、金属鉱物分野も2017年、2018年と2年連続で減少している。鉱業部門の再活性化に向けた特効薬は見当たらない。

(稲葉公彦)

(メキシコ)

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