ウズベキスタン政府、ITスタートアップ支援へ本腰

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月14日

ウズベキスタン政府が2019年に入り、IT分野でのスタートアップ支援を加速させている。7月24日に首都タシケント市で同国初の「ITパーク」が業務を開始した。最大の特徴はパーク自体がファンド機能を備えていること。政府はIT分野のスタートアップ振興で若年層の雇用創出、社会・経済分野のデジタル化移行に向けた起爆剤としたい考え。

シャフカト・ミルジヨエフ大統領は2018年9月にインドを訪問し、IT分野での協力で合意。1月に閣僚会議決定第17号「IT技術・プログラム製品(のための)テクノロジーパーク設立に関する措置について」を採択、インド側と協力して、a.インフラ、b.最新設備、c.財務・法務などのコンサルティング、d.ビジネスアクセラレーター、e.ベンチャーファンド(基金)機能を持つ「ITパーク」を設立することが決定した。

写真 ITパーク、ウズベキスタン側で経費を負担し、インド人技術者が1人常駐している(ジェトロ撮影)

ITパーク、ウズベキスタン側で経費を負担し、インド人技術者が1人常駐している(ジェトロ撮影)

ITパークのファンドには情報技術通信発展省が予算を拠出。7月にはパークの機能の詳細が決定した(閣僚会議決定第589号)。スタートアップ支援は「インキュベーション(創造)」と「アクセラレーション(加速化)」にプログラム化され、入居企業には法人税と社会保障関連税の免除、個人所得税の割引(50%)、外国人技術者へのドルによる給与支払いや外貨取引(注1)などが認められる。

ジェトロのインタビュー(8月6日)に対し、ITパーク代表のファルホド・イブラキモフ氏は、IT分野のスタートアップへの支援を手厚くする背景について、a.他分野よりも短期間で成果が見えやすい、b.IT(デジタル)技術は社会・経済問題の解決に幅広く適用できる、c.初期投資が少なく済み、若者の雇用促進や能力開発につながる、と説明。税制優遇・ファンド資金というインセンティブに加え、韓国の仁荷大学タシケント校を中心にIT人材の供給が進んでいることから、入居希望者は多いと話す(注2)。入居するスタートアップには3カ月のインキュベーション期間が設定され、期間経過時にITパークが他のベンチャーキャピタルとともに、基金からの共同出資の可否を判断することで、スタートアップの新陳代謝を促す。入居者には「プロダクトオリエンテッド(製品優先)」のマインドを求める。

ITパークは近隣のCIS諸国のITインキュベーション施設と積極的に連携を取る。ウズベキスタンにはない技術・プロダクトを持つスタートアップに対し、ウズベキスタンでの設立支援(出資を含む)や、同社技術者を核にウズベキスタンのIT人材を活用するかたちでの活動支援などを行う。6月21日にはカザフスタンの首都ヌルスルタンの「アスタナ・ハブ」と相互理解・協力に関する覚書を締結したほか、ベラルーシのスタートアップなどとの交流も進めている。

写真 ITパークのファルホド・イブラキモフ代表。日本のスタートアップとの協力にも関心(ジェトロ撮影)

ITパークのファルホド・イブラキモフ代表。日本のスタートアップとの協力にも関心(ジェトロ撮影)

(注1)輸出対価額内でのオペレーションなど、一定の制限は設定されている。

(注2)当初は17社でスタートする予定。建物を増設中で、2020年に向け入居スペースを増やしたいとしている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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