ブロックチェーン利用の銀行・証券取引業務を初めて許可

(スイス)

ジュネーブ発

2019年08月30日

スイス金融市場監督庁(FINMA)は8月26日、ブロックチェーン技術を用いた暗号資産(仮想通貨)取引サービスの提供を目指すSEBAクリプト(本社:ツーク州)とシグナム(本社:チューリヒ州)に、スイスで初めて銀行・証券取引業務のライセンスを与えたと発表した。

ブロックチェーン技術を用いた暗号資産は匿名での取引が可能なことから、資金洗浄やテロ資金の調達に利用されることが懸念されており、マネーロンダリング・テロ資金対策のための多国間の枠組みである金融活動作業部会(FATF)が6月に、暗号資産およびその取引事業者に対する最新のガイドラインを示した。FINMAはこれを踏まえ、スイス独自の規制上乗せ措置として、取引範囲を限定することも併せて発表した。銀行・証券取引業務のライセンスが付与された2社に対しては、適切な発展を保証する条件を満たす運営が求められ、今回発表された規制方針が適用される。FINMAとして安全運転に努めている格好だ。

暗号資産を取り扱う銀行・証券取引業務については、2018年から関係者が準備し(2018年10月9日記事参照)、FINMAも、先日の証券取引仲介業務の許可(2019年8月19日記事参照)に引き続いて、今回の銀行・証券取引業務のライセンス付与と順次対象を広げている。

スイスでは以前から、ツーク州近辺にブロックチェーン技術のスタートアップが集積していたが、匿名取引によるリスク懸念から、金融への応用が進んでいなかった。スイスの証券取引所運営会社SIXも2018年7月、ブロックチェーン技術を用いたデジタル資産の取引・運用業務を行う取引所構想を発表した際、適切な規制がないことを課題に挙げていた。今回の金融規制の整備により、スイスの「クリプトバレー(暗号資産の谷の意味)」発のビジネスが発展できるか注目される。

(和田恭)

(スイス)

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